「中学校で受けるが、小学校の免許も持っている。小学校も併願できないか」。「特別支援学校にも関心がある」。
こうした疑問の答えは、自治体ごとに違う。併願の制度が無い自治体もあれば、併願先の試験の受け方が違う自治体もある。
この記事は、教育委員会の公式資料だけをもとに、2026年実施の要項で、校種・教科の併願がどう扱われているかを整理したものだ。要項の本文を確認できたのは、東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、大阪府の5つ。
先に、この記事の「併願」の意味を決めておく。この記事では、同じ自治体の中で、第一希望のほかに、第二希望の校種・教科を持つことを、併願と呼ぶ。他の自治体との併願は扱わない。
年度の呼び方は、次のとおり。5つは、すべて2026年に実施された試験だ。
| 自治体 | 要項の表記 | 実施年 |
|---|---|---|
| 東京都 | 令和8年度選考(9年度採用) | 2026年 |
| 神奈川県 | 令和8年度実施 | 2026年 |
| 埼玉県・千葉県・大阪府 | 令和9年度(令和8年度実施) | 2026年 |
2027年実施の要項は、確認した範囲では、まだ出ていない。併願の制度は、毎年変わる。実際、埼玉県は2026年実施の要項で併願制度を新設し、東京都は併願できる組み合わせを広げている。受験する年の最新の資料で、必ず確認してほしい。
愛知県は、受験案内に校種・教科の併願の記述を確認できなかったため、この記事には入れていない。確認できなかったことは「確認できなかった」と書く。
| 自治体 | 併願 | どう併願できるか |
|---|---|---|
| 東京都 | あり | 小学校と特別支援学校小学部を、お互いに。中学・高校の教科は、同じ教科の特別支援学校へ |
| 神奈川県 | 確認できなかった | 申込みは、1つの選考区分、校種等・教科のみ |
| 埼玉県 | あり(2026年実施で新設) | 中学校等・養護・栄養の志願者が、小学校等へ |
| 千葉県 | あり | 小学校以外から小学校へ(加点あり)、特別支援教育へ。養護からは小・中・高・特別支援へ |
| 大阪府 | あり | 小学校→「小中いきいき連携」、中学校↔中学部・高等学校↔高等部、中学校↔高等学校 |
併願の「向き」が、自治体で違う。小学校へ向かう併願は埼玉県と千葉県。特別支援学校へ向かう併願は東京都、千葉県、大阪府。中学と高校をまたぐ併願は大阪府だ。
東京都は、併願の仕組みが、要項に細かく書いてある。
併願の仕組み
併願できる組み合わせ(要項の表より)
| 第一希望 | 第二希望(併願教科) |
|---|---|
| 小学校全科(英語コースも) | 特別支援学校小学部 |
| 特別支援学校小学部 | 小学校全科 |
| 中学校 技術 | 特別支援学校中学部 技術 |
| 中学校・高等学校共通 社会・国語・数学・英語 | 特別支援学校中学部・高等部 の同じ教科 |
| 中学校・高等学校共通 理科(物理・化学・生物・地学)、小学校・中学校共通 理科 | 特別支援学校中学部・高等部 理科 |
| 中学校・高等学校共通 音楽・美術、小学校・中学校共通 音楽・美術 | 特別支援学校小学部・中学部・高等部 音楽・美術 |
| 小学校・中学校・高等学校共通 家庭 | 特別支援学校小学部・中学部・高等部 家庭 |
| 小学校・中学校・高等学校共通 保健体育 | 特別支援学校中学部・高等部 保健体育 |
小学校と特別支援学校小学部は、どちらを第一希望にしてもよい。ほかは、第一希望の側から、特別支援学校へ向かう形だ。
特別支援学校の免許がなくても併願できる。 ただし、特別支援学校で採用された場合は、5年以内に取得する。
2026年実施での変更(令和9年度採用)
要項の「主な変更点」に、2つ書いてある。
気をつけたい点
併願教科で第一次選考に合格し、その併願教科で名簿登載(または期限付任用教員名簿登載)になった場合、原則として、第一希望の校種等・教科には異動ができないと、要項に書かれている。
神奈川県の要項で、併願について確認できたのは、申込みの注意だけだ。
要項の本文を検索しても、「併願」という言葉は見当たらなかった。校種・教科をまたぐ併願の制度は、確認した範囲では見当たらない。第二希望を持ちたい人は、問い合わせて確かめるのが確実だ。
埼玉県は、2026年実施の要項で、併願制度を新設した。
併願できる人と、併願先
どう判定されるか
注意点
なお、「併願の場合を除き、複数の志願区分、教科等を志願することはできない」とも、要項の冒頭に書かれている。
千葉県は、併願が3方向ある。そのうち、小学校への併願には、第1次選考の加点がつく。
小学校以外の志願者 → 小学校へ
要件は、次のア・イのどちらか。
イで小学校に採用された場合は、専科担当になる。
小学校併願の第1次選考の加点(希望制)
| 第1次選考で受ける内容 | 加点の内容 |
|---|---|
| 「教職教養」と「専門教科」の両方 | 第1次選考の合計点に10点 |
| 「教職教養」か「専門教科」のどちらか1つ | 第1次選考の合計点に5点 |
| 「小論文」 | 小論文の評価を1段階繰り上げ |
加点を希望するときは、出願時に「加点を希望する」を選ぶ。出願以降は、加点希望に応じてもらえない。
特別支援教育以外の志願者 → 特別支援教育へ
次のア〜エのいずれかに当てはまる人が、併願できる。
イ・ウ・エで特別支援学校に採用された場合は、5年以内に免許状を取得する。
養護教諭の志願者 → 小学校・中学校・高等学校・特別支援教育へ
併願する学校種・教科の普通免許状を取得している、または令和9年3月31日までに取得見込みであること。養護教諭の併願は、養護教諭の教員採用試験の記事でも、自治体別に比べている。
大阪府は、併願が3つの型に分かれている。『小学校』『中学校』『中学部』『高等学校』『高等部』の出願者が、対象だ。選考区分は、一般選考と、障がい者対象の選考。
| 型 | 併願のしかた | 主な要件 |
|---|---|---|
| ① 小中いきいき連携 | 『小学校』で出願 → 『小中いきいき連携』を併願 | 小学校・中学校の両方の普通免許状(見込み含む)。中学校は、『中学校』で募集する教科に限る |
| ② 支援学校 | 『中学校』↔『中学部』、『高等学校』↔『高等部』 | 出願の教科(科目)と同一の教科に限る |
| ③ 中高 | 『中学校』↔『高等学校』、『中学部』↔『高等部』 | 中学校・高等学校の両方の普通免許状(同一教科)。教科は国語、数学、理科、音楽、美術、技術・工業、家庭、英語 |
②と③は、両方を希望してもよい。その場合は、②を優先して扱う。
②で、高等学校・高等部は、「書道」「工業(電気・土木・工業化学・工業デザイン)」「商業」「家庭・福祉共通」「公民・福祉共通」を除く、すべての教科で併願できる。
『中学部』『高等部』に併願合格し、特別支援学校教諭免許状を持っていない場合は、採用後3年以内に取得する(採用時に誓約書を出す)。
どう判定されるか
要項に、はっきり書かれている。併願先の判定は、次の両方が当てはまる場合に限られる。
出願した校種等・教科(科目)が合格なら、併願先では判定しない。併願は、「第一希望で落ちたとき、併願先に空きがあれば拾われる」という仕組みだ。
一般選考の「大学等推薦者」が併願するときは、推薦する大学等が、併願に必要な免許状の課程認定を受けていることも、条件になる。
要項から読み取れる、自治体ごとの違いを、4つにまとめる。
| 点 | 東京都 | 埼玉県 | 千葉県 | 大阪府 |
|---|---|---|---|---|
| 併願先の試験を受けるか | 第一次の結果が基準を満たせば、第二希望の第二次を受ける | 受けない。志願区分の試験の結果で判定 | 要項では確認できなかった | 受けない。第2次の結果で、条件を満たす場合のみ判定 |
| 併願の申請 | 申込時に選択。受理後は変更不可 | 出願時に申請。期限後は不可 | 志願書・面接カードに記入。加点は出願時に選択 | 出願画面の併願欄で選択(出願は1回のみ) |
| 併願先の免許 | なくてもよい(特別支援のみ。採用後5年以内に取得) | 小学校教諭普通免許状(見込み含む) | 併願先の免許(見込み含む)。特別支援は例外あり | 併願先の免許(見込み含む)。特別支援は採用後3年以内に取得 |
| 併願先に合格したあと | 原則、第一希望へは異動できない | 確認できなかった | 確認できなかった | 確認できなかった |
併願の向きは、自治体ごとに決まっている。小学校の受験者が、中学校の教科を第二希望にするような併願は、東京都・埼玉県・千葉県の要項には見当たらなかった。大阪府の「小中いきいき連携」は、小学校と中学校の両方の免許を持つ人向けの型だ。第一希望と第二希望の組み合わせが、表にあるかを、先に確かめる。
多くの自治体が、併願先の免許を、取得している、または令和9年3月31日までの取得見込みであることを求める。取得見込みの場合は、見込みの証明が必要になることがあるので、要項の書類の項目も、読んでおく。特別支援学校だけは、免許がなくても併願できる自治体がある。
東京都は、原則として、第一希望の校種等・教科には異動できない。併願で拾われたら、そちらで働くつもりがあるかを、出願前に考える。ほかの自治体は、要項で確認できなかったので、問い合わせるのが確実だ。
東京都は、受理後の変更ができない。埼玉県は、出願期限までに申請がなければ、併願が認められない。千葉県は、出願以降の加点希望に応じない。併願は、出願のときに決めるものだ、と考えておく。
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