「英検やTOEICを持っていると、教員採用試験で有利になるのか」。調べても、自治体ごとに扱いが違い、全体像がつかみにくい。
この記事は、教育委員会の公式資料だけをもとに、2026年実施の要項で、英語資格がどう扱われるかを整理したものだ。確認できたのは、大阪府、仙台市、北海道・札幌市、神奈川県、長野県、愛知県、相模原市の7つ。
先に、年度の呼び方を確認しておく。この記事の7つは、すべて2026年に実施された試験だ。
| 自治体 | 要項の表記 | 実施年 |
|---|---|---|
| 大阪府・仙台市・北海道・札幌市・長野県・愛知県 | 令和9年度(2027年度)採用 | 2026年 |
| 神奈川県・相模原市 | 令和8年度実施 | 2026年 |
2027年実施の要項は、確認した範囲では、まだ出ていない自治体が多い。制度は毎年変わるので、受験する年の最新の資料で必ず確認してほしい。確認できなかったことは「確認できなかった」と書く。
要項を読むと、英語資格は次の3つの形で使われている。
| 使われ方 | 内容 | 主な対象 |
|---|---|---|
| ① 加点 | 第1次選考の得点に、点数を足す | 小学校、中学校・高校の英語 |
| ② 免除 | 実技試験や、筆記の一部を受けなくてよい | 中学校・高校の英語 |
| ③ 専用の選考区分 | 英語資格を条件にした、特別選考で受ける | 中学校・高校の英語 |
確認した7自治体は、いずれも、小学校の受験者に英語資格の加点がある。 英語の教員ではなく、小学校を受ける人でも、英検やTOEICが得点になる。
ただし、点数は、自治体で大きく違う。
小学校を受験する人の、英語資格の加点を並べる。2026年実施の要項の数字だ。
| 自治体 | 加点 | 基準の目安(英検/TOEIC) |
|---|---|---|
| 大阪府 | 10・20・40点 | 2級・準1級・1級。TOEIC(L&R+S&W×2.5)1,150・1,560・1,845点以上 |
| 仙台市 | 10点・20点 | 2級以上で10点、準1級以上で20点。TOEIC(合算)1,150点以上で10点、1,560点以上で20点 |
| 北海道・札幌市 | 10点 | 準1級以上。TOEIC(合算)1,560点以上 |
| 神奈川県 | 5点 | 準1級以上。TOEIC L&R 785点以上 |
| 長野県 | 5点 | 準1級以上(またはTOEIC公開テスト730点以上) |
| 愛知県 | 5点 | 2級以上(1級・準1級・2級)。TOEIC 500点以上 |
| 相模原市 | 各試験に3点または5点(計6点または10点) | 準1級相当で各5点、2級相当で各3点 |
加点の価値は、第1次選考の満点と比べないと、分からない。要項で満点が確認できた3つで、計算した。
| 自治体 | 第1次の満点 | 英語資格の最大加点 | 満点に対する割合(計算) |
|---|---|---|---|
| 大阪府 | 筆答テスト150点 | 40点(英検1級など) | 約27% |
| 仙台市 | 専門200点+教養100点=300点(小学校) | 20点 | 約7% |
| 北海道・札幌市 | 教養40点+専門100点+専門100点=240点 | 10点 | 約4% |
神奈川県・長野県・愛知県・相模原市は、第1次の満点を、この記事では確認していない。加点の「点数」だけを見て、自治体を比べると、誤解しやすい。 大阪府の40点は、満点150点に対する数字だ。
大阪府は、「英語資格所有者」の加点を、出願校種ごとに設けている。加点は、表の中から1つだけ選ぶ。複数の資格を持っている人は、最も加点の高いものを選ぶ。出願の締切後は、変更できない。
小学校(小中いきいき連携、幼・小共通、小学部も同じ表)
| 資格 | 10点 | 20点 | 40点 |
|---|---|---|---|
| 実用英語技能検定 | 2級 | 準1級 | 1級 |
| TOEFL iBT | 42点以上 | 72点以上 | 95点以上 |
| IELTS(アカデミック) | 4.0以上 | 5.5以上 | 7.0以上 |
| TOEIC L&R+S&W×2.5(公開テスト) | 1,150点以上 | 1,560点以上 | 1,845点以上 |
| ケンブリッジ英語検定 | 140以上 | 160以上 | 180以上 |
| GTEC | 930以上 | 1,180以上 | 1,350以上 |
| TEAP | 225以上 | 309以上 | 375以上 |
| TEAP CBT | 420以上 | 600以上 | 800以上 |
このほか、中学校または高校の英語の普通免許状を持っている(取得見込みを含む)と、20点になる。
**中学校・高校の「英語」**は、10点か40点の2段階だ。英検は準1級で10点、1級で40点。TOEFL iBTは72点以上で10点、95点以上で40点。TOEICは、合算で1,560点以上が10点、1,845点以上が40点。
取得の時期にも、条件がある。英検とケンブリッジは、令和8年3月31日までに取得したもの。TOEFL・IELTS・TOEIC・GTEC・TEAPは、令和6年4月1日から令和8年3月31日までに受験し、スコアを取ったものだ。
書類は、令和8年4月17日(金)の消印有効で、資格を証明する書類の写しを郵送する。第2次の面接テストの日に、原本を見せる。
大阪府は、この英語資格の加点を、ほかの加点(特別支援学校教諭免許10点、社会人経験など)と併用できると書いている。ただし、小学校で、中学・高校の英語免許による加点を受ける人は、「小学校・中学校教諭複数免許状所有に係る加点」の対象にならない。
大阪府の試験の全体像は、大阪府 教員採用試験 二次選考で整理している。
仙台市は、特別支援教育や、小学校の算数・理科・体育・外国語(英語)などに高い専門性を持つ教員を採用するために、一定の条件を満たした人に、第1次選考の得点へ加点を行う。出願時に申請した人が対象で、申請はいずれか1つだ。複数は申請できない。
英語に関する加点は、次のとおりだ。
| 受験区分 | 条件 | 加点 |
|---|---|---|
| 小学校教諭 | 英語資格A: 英検準1級以上/TEAP 309/GTEC 1190/TOEIC(L&R/S&W合算)1560/TOEFL iBT 72/IELTS 5.5/ケンブリッジ160以上 | 20点 |
| 小学校教諭 | 英語資格B: 英検2級以上/TEAP 225/GTEC 960/TOEIC 1150/TOEFL iBT 42/IELTS 4.0/ケンブリッジ140以上 | 10点 |
| 中学校・高校教諭(英語) | 英語資格Aと同じ基準 | 10点 |
| 小学校教諭 | 中学校または高校(数学・理科・保健体育・英語)の免許状 | 20点 |
TOEICは、S&Wのスコアを2.5倍して合算する。申請が1つだけなので、英語資格と免許は、どちらか一方を選ぶ。
北海道・札幌市は、「英語に関する加点(10点)」がある。対象は、小学校教諭、特別支援学校の小学部、中学校・高校・特別支援学校の中学部・高等部の英語だ。条件は、次のいずれかだ。
加点には、「海外勤務・留学経験者」(英語を使った勤務または留学が2年以上)、理科・数学・保健体育の免許もあるが、加点の上限は、合計で10点だ。第1次検査の総合点(教養40点、専門Ⅰ100点、専門Ⅱ100点)に足される。
免除は、次の5.で扱う。
神奈川県は、「小学校区分受験における、英語資格等所有者に対する加点」を設けている。小学校の筆記試験の受験者が、次のいずれかを満たすと、第1次試験の筆記試験に5点が加点される。
資格は、受験申込期限(令和8年5月7日)までに取得し、第1次試験時に有効なものに限る。
神奈川県には、ほかにも、司書教諭5点、特別支援学校教諭免許5点、音楽・美術の芸術実績者5点の加点がある。「大学3年生等早期チャレンジ選考」の申込者は、加点制度を利用できない。
確認は、第2次試験に合格したあとだ。10月中旬以降に、原本を提出または提示する。加点の要件を確認できなかった場合は、加点が取り消され、第1次試験の合格最低点に届かなくなった人は、不合格になる。
長野県は、第1次選考の「専門教科」の得点に、3点または5点、最大10点を加点する。英語に関する項目は、次の2つだ。
小学校・中学校の選考では、出願時に、該当する項目から最大2つまで選べる。加点は最大10点だ。たとえば、小学校免許と英検準1級を持つ人(小学校)は、5点になる。
愛知県には、第1次試験の加点として、「小学校英語加点」(5点)がある。対象は、小学校教諭の受験者で、次のいずれかを満たす人だ。
証明書類は、合格時・補欠時に提出する。主催団体から教育委員会への直接送付も可能だ。
愛知県の加点は、ほかにも種類が多い。司書教諭10点、登録日本語教員10点、特別支援教育30点、国際バカロレア(英語による教科指導)30点(高校の英語以外の教科)などがある。愛知県の試験の全体像は、愛知県 教員採用試験 二次選考で整理している。
相模原市の加点は、第1次の「教科専門試験」と「一般教養・教職専門試験」の両方に付く。最大は10点(小学校全科の英語コースは20点)で、複数の要件を満たしても、合算しない。
| 受験区分 | 条件 | 加点 |
|---|---|---|
| 小学校全科(英語コース) | 英語の免許状/TOEFL iBT 72点以上/TOEIC L&R 785点以上/英検準1級以上 | 各試験に10点(計20点) |
| 小学校全科・特別支援・中学校(英語のみ) | 準1級相当の英語資格 | 各試験に5点(計10点) |
| 小学校全科・特別支援 | TOEFL iBT 42点以上/TOEIC L&R 550点以上/英検2級以上 | 各試験に3点(計6点) |
取得見込みで加点を受けた人が、証明できなかった場合は、加点が取り消される。第1次の合格点に届かなければ、名簿から削除される。相模原市の詳細は、相模原市教員採用試験の全体像にまとめている。
英語の教員を目指す人には、加点だけでなく、試験の一部が免除される自治体がある。
| 自治体 | 条件 | 免除される試験 |
|---|---|---|
| 北海道・札幌市 | 英検準1級以上/TOEFL iBT 72点以上/TOEIC 1,560点以上(合算)。令和6年6月15日以降に受けたもの | 第1次の専門検査(Ⅰ)と、第2次の実技検査(英語) |
| 愛知県(英語有資格者特別選考) | 英検1級/TOEFL iBT 92点以上/TOEIC 860点以上(IPテストは不可)。令和6年6月以降 | 第2次の実技試験 |
| 神奈川県(特別選考④) | 英検準1級以上/TOEFL iBT 80点以上/TOEIC 730点以上(IPテストを除く) | 第1次の教科専門 |
長野県にも、「スペシャリスト選考②(英語資格所有者)」がある。対象は、中学校・高校の英語で、英検1級、TOEFL iBT〈会場受験〉100点以上、TOEIC〈公開テスト〉900点以上(令和3年4月1日以降の取得)のいずれかが条件だ。選考方法は、「一般選考」か「社会人を対象とした選考」のどちらかを選ぶ。免除があるかどうかは、この記事では確認していない。
英語の専門教養の内容は、中学校 英語の専門教養で整理している。
要項を比べて、共通して気をつけたい点を、3つに絞る。
資格の取得時期には、条件がある。
| 自治体 | 取得・受験の条件 |
|---|---|
| 大阪府 | 英検・ケンブリッジは令和8年3月31日までに取得。ほかは令和6年4月1日〜令和8年3月31日に受験 |
| 北海道・札幌市 | TOEFL・TOEICは令和6年6月15日以降に受けたもの |
| 愛知県 | 免除(英語有資格者特別選考)は令和6年6月以降 |
| 神奈川県 | 受験申込期限(令和8年5月7日)までに取得し、第1次試験時に有効なもの |
| 長野県 | スペシャリスト選考②は令和3年4月1日以降の取得 |
TOEICは、IPテストが使えないことがある。 愛知県(英語有資格者特別選考と小学校英語加点)と、神奈川県の特別選考④は、IPテストを除くと書かれている。大阪府は公開テストに限る。
TOEIC L&RとS&Wを両方受ける場合、S&Wのスコアを2.5倍して合算する自治体がある(大阪府・仙台市・北海道・札幌市)。神奈川県と相模原市は、TOEIC L&Rのスコアで基準を示している。長野県と愛知県は、TOEICのスコア(長野県は公開テスト)で示している。
証明書類を出す時期は、自治体で違う。
取得見込みで申請した場合は、取得できなかったときに、加点や免除が取り消される。神奈川県と相模原市は、加点が取り消され、合格点に届かなければ不合格(名簿から削除)になる。北海道・札幌市は、名簿の登録が取り消される。
ここからは、要項に書かれた事実ではなく、一般論だ。
同じ英検準1級でも、加点は、大阪府(小学校)20点、仙台市(小学校)20点、北海道・札幌市10点、神奈川県・長野県5点と違う。満点との割合も違う。受験する自治体が決まっていれば、その要項の表で、自分の資格がいくつになるかを、先に確認するのが早い。
複数の自治体を受ける場合、資格の扱いが、自治体ごとに違う。たとえば、TOEICをIPテストで受けていても、愛知県や、神奈川県の特別選考④では、使えない。加点のために受けるなら、公開テストを選ぶのが無難だ。
要項には、加点は、第1次選考の得点に足されると書かれている。面接や、第2次の試験は、別に評価される。英語資格は、小学校の外国語の授業を担う力の一つだが、合否は、面接や、模擬授業・論文などを含めた全体で決まる。
大学推薦や社会人枠など、ほかの特別選考との関係は、次の記事で整理している。
教員採用試験の大学推薦(大学推薦特別選考)を、令和8年実施の各自治体の要項で比較。免除されるのは多くが第一次試験で、面接・論文は一般と同じく受ける。山形・福岡の成績基準、東京の選考方法、2月に実施する神奈川の例、書類審査で外れた場合の扱いまでまとめた。
教員採用試験の「社会人枠」を、令和8年(2026年)実施の東京・神奈川・埼玉・千葉・愛知・大阪府・大阪市の要項で比較。筆記が免除される型、10点加点の型、試験は一般と同じ型の3つに分かれる。必要な勤務年数(2〜5年)、正規職員に限るか、免許が無くても受けられるかまで一覧にした。
教員採用試験の中学校英語専門教養は、教科内容(語彙・文法・読解・英作文)と指導法・学習指導要領の両方が問われる。4技能・CEFR・新指導要領のキーワードも含めて出題範囲と対策を解説する。
相模原市教員採用試験を、相模原市教育委員会の令和8年度実施の要項と結果で整理。第1次はマークシート2科目、第2次は模擬授業7分・個人面接・実技。配点は個人面接400点、基準点と教科別の総合合格点も公表。倍率は合計2.8倍。小論文は無し。2027年実施の第1次試験は7月4日予定。
大阪府教員採用試験 二次選考(8/8〜)を徹底解説。小学校・小中いきいき連携・支援学校だけ実施される論作文、共通の個人面接20分と模擬授業4分30秒の段取り、教科専門・実技の校種別対策を元教員視点でまとめた。
教員採用試験の「共通化」(第一次選考の共同実施)を、文部科学省の資料と各自治体の公式ページで整理。2027年実施(令和10年度採用)から51自治体が共通問題を使い、筆記は5/8・6/12・7/10の3日程。出題数や時間、参加自治体と東京・神奈川など一覧にない自治体、併願の注意点までまとめた。
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