「教員採用試験が共通化される」という話を聞いて、いつから何が変わるのか、自分が受ける自治体は関係あるのか、気になっている人は多いと思う。
先に結論を書く。2027年(令和9年度)実施の第一次選考から、51自治体が共通問題を使って筆記試験を行う。 筆記は5月8日・6月12日・7月10日の3日程で、受験する自治体によって日が違う。一方で、東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県など、参加しない(一覧にない)自治体もある。
この記事は、文部科学省の資料(令和8年4月30日)と、自治体協議会の出題方針(令和8年7月29日)、各自治体の公式ページをもとに整理したものだ。 制度はまだ詳細が決まっていない部分がある。参加状況や日程は変わる可能性があるので、受験する自治体の最新の募集要項で必ず確認してほしい。
確認できなかったことは「確認できなかった」と書き、合格しやすさなどの評価は補っていない。
なお、自治体によって年度の呼び方が違う。この記事では、**2027年に実施する選考(令和10年度採用)**を「2027年実施」と書く。自治体の資料には「令和9年度実施」「令和10年度」の表記が混在している。
共通化は、正式には教員採用選考に係る第一次選考の共同実施と呼ばれる。 いまは、都道府県・指定都市の教育委員会が、第一次選考の問題をそれぞれ独自に作っている。共同実施では、複数の自治体が協議会を作り、共通の問題を使って筆記試験を行う。文部科学省は事務局の補佐として参画している。
文部科学省の資料は、共同実施の効果を次のように挙げている。
3つ目は、制度の狙いとして書かれているものだ。実際に併願しやすくなるかどうかは、後で書く日程の組み方による。
共同実施の方式には、2つの案があった。
| 方式 | 内容 |
|---|---|
| 統一試験方式 | 第三者機関が、作問から開催まで一括して処理する。自治体独自の問題の追加や改変はできない |
| 共通問題配付方式 | 第三者機関が作成した問題を活用し、従来どおり各教育委員会が試験を運営する。自治体独自の問題の追加や改変ができる |
令和8年4月時点の文部科学省の資料では、協議会は、令和9年度から**「共通問題配付方式」**による実施に向けて協議中とされている。 この方式では、問題の大部分は共通でも、同一の試験問題とは限らない。協議会の出題方針にも、共通問題を各自治体が独自に改編して使う場合があること、一般教養または教職教養を実施しない自治体もあることが書かれている。
つまり、「全国一斉に同じ試験になる」わけではない。受験する自治体の要項を読む必要は、これまでと変わらない。
文部科学省の資料によると、協議会は、第一次選考を5月8日(土)、6月12日(土)、7月10日(土)の3日程で実施し、別途予備日も設けることで合意している。 いまの第一次選考は、多くの自治体で6月〜7月に行われている。2027年実施では、早い日程で5月に筆記を受ける自治体が出てくる。
どの日を選ぶかは自治体ごとに違う。公式ページなどで確認できたものを、日程別に並べる。
| 筆記の日程 | 確認できた自治体 | 備考 |
|---|---|---|
| 5月8日(土)・予備日6月12日 | 静岡市、浜松市 | 面接は翌日(5月9日)。静岡市の要項の公表は2027年1月下旬頃、浜松市は2027年2月初旬の予定 |
| 6月12日(土) | 三重県、堺市、名古屋市、大阪府、栃木県 | 三重県は第2次が7月中旬以降、栃木県は第2次が8月上旬の予定 |
| 7月10日(土) | 宮城県 | 宮城県教育委員会は協議会に参画している |
この表は、今回確認できた自治体だけだ。ほかの参画自治体の日程は確認できていない。要項が公表されてから、自分が受ける自治体の日を確認してほしい。 愛知県は参画自治体の一覧に入っているが、公式の日程は今回確認できなかったので、表には入れていない。
併願を考える人にとって大事なのが、この点だ。 文部科学省の資料は、共通問題配付方式では、同一日程で実施する自治体同士の併願は困難としている。そのうえで、統一日を複数用意して、日程の重ならない自治体を併願できるようにすることが想定される、と書いている。
たとえば、6月12日に筆記を行う三重県と名古屋市は、同じ日に受けることができない。5月8日の静岡市と6月12日の三重県なら、日程は重ならない。ただし、実際に併願できるかは、それぞれの要項の出願や第二次選考の日程にもよる。ここは、各自治体の要項が出てから確認する部分だ。
参加しない自治体は、これまでと同様に独自の日程で試験を行う。日程が重ならなければ、共同実施に参加する自治体と参加しない自治体を併願する余地はある。ただし、これも要項で確認が必要だ。
文部科学省の資料と協議会の出題方針から、出題の枠組みを整理する。
| 試験 | 内容 | 時間・問題数の目安 |
|---|---|---|
| 教養試験 | 一般教養と教職教養を統合して実施 | 60分・40問程度(一般教養10問程度+教職教養30問程度) |
| 教科専門試験 | 校種・教科ごとに実施 | 1教科あたり60分・25問程度 |
校種ごとに、受ける試験の組み合わせが決まっている。
| 校種等 | 受験が必要な試験 |
|---|---|
| 小学校 | 教養試験+小学校教科専門 |
| 中学校 | 教養試験+中学校教科専門 |
| 高等学校 | 教養試験+高等学校教科専門 |
| 特別支援学校 | 教養試験+特別支援教育+小中高いずれかの校種の教科専門(特別支援教育を受験科目にするかは自治体で異なる) |
| 養護教諭 | 教養試験+養護教諭 |
| 栄養教諭 | 教養試験+栄養教諭 |
協議会の出題方針(令和8年7月29日)では、教養試験の構成が次のように示されている。
難易度の想定も書かれている。
教職教養の比重が大きい。40問のうち、30問が教職教養になる計算だ。教職教養の対策は教職教養の勉強法、一般教養は一般教養とは?教職教養との違い・出題範囲・勉強法にまとめている。
教科専門は、教科ごとに25問程度が目安だ。
文部科学省は、令和7年度の事業で、共同実施に向けたモデル問題を作成している。公表されているのは、協同出版と日本人事試験研究センターが担当した成果報告書だ(報告書の日付は令和8年5月21日)。著作物が含まれるため、根拠資料の部分は除いて公表されている。 モデル問題のねらいは、知識を思い出すだけの問題ではなく、思考力・判断力・表現力などを評価することだ。資料に挙げられた例は、国語で図表(非連続型テキスト)を読み取る問題、理科で授業中の教師と生徒のやり取りを場面にした問題だ。
また、協議会の出題方針には、一般教養のモデル問題5問が付いている。内容は、難民等の統計、高分子化合物、命題の推論、仕事算、資料の読み取りだった。 実際の問題がモデル問題と同じ形式になるかは、まだ確認できない。協議会が「この方針と構成に沿って作問している」と書いている段階だ。
文部科学省の資料に、協議会に参画している51自治体の一覧が載っている。令和8年4月時点のものだ。
都道府県(37) 北海道、青森県、宮城県、秋田県、山形県、福島県、茨城県、栃木県、新潟県、富山県、石川県、福井県、山梨県、長野県、岐阜県、静岡県、愛知県、三重県、滋賀県、京都府、大阪府、奈良県、和歌山県、島根県、山口県、徳島県、香川県、愛媛県、高知県、福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県、沖縄県
市・地区(14) 札幌市、仙台市、新潟市、静岡市、浜松市、名古屋市、京都市、大阪市、堺市、神戸市、北九州市、福岡市、熊本市、大阪府豊能地区
報道では、採用試験を実施する68自治体(都道府県、政令指定都市、大阪府豊能地区)のうち、51が参画していると伝えられている。
上の一覧に入っていない自治体は、次のとおりだ。一覧との突き合わせは、この記事で行ったものだ。
首都圏の都県市が、まとめて一覧に入っていない。大学の教職課程センターの案内にも、文部科学省の一覧に添えて、東京や周辺の埼玉・千葉・神奈川などは参加を見送るとの記述がある(出所は明記されていない)。
ただし、注意が3つある。
東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県などを受ける人は、これまでどおり、各自治体の独自の試験になる前提で、募集要項を確認することになる。
公式ページで確認できた、自治体ごとの違いをまとめる。
堺市は、2027年実施(令和10年度採用)の選考から、共通問題配付方式の筆答試験を実施する。従来は第1次と第2次に分けていた筆答試験を、同じ日の第1次試験にまとめる。教養試験と教科専門試験を同日に行う。
堺市のページには、経過措置も書かれている。これまで第1次試験の全部を免除していた制度は、令和10年度選考では、第1次試験の筆答(専門)の受験が必要になる。令和11年度選考は、現行どおり第1次を全て免除する。第1次の合格者だけが、第2次試験を受けられる。
大阪府の令和10年度選考(2027年実施)では、いまは別の日に行っている教養の筆答テストと専門の筆答テストを、同一の日(6月12日)にまとめる。両方を合わせて第一次選考とする。大学3年生等対象の選考と免除制度は、従来どおり続く。
栃木県の資料では、令和8年度実施の第1次試験は7月5日に県独自の問題で行い、2027年実施は6月12日に共同作問(共通問題配付方式)で行う予定だ。第2次試験は8月上旬を予定している。
静岡市の資料では、筆記が5月8日、面接が5月9日だ。予備日に筆記を行った場合は、6月12日に筆記、6月13日に面接になる。浜松市も、個人面接は筆記の翌日(5月9日)に、浜松市が主体となって実施する予定だ。 筆記と面接の間隔が短い。面接の準備は、筆記より前に進めておく必要がある。
名古屋市は、協議会が作成した共通の試験問題を活用して、6月12日に第1次試験を行う。ページには、実施内容の詳細は検討中とあり、決まり次第知らせるとされている。
ここからは、資料に書かれた事実ではなく、一般論として整理する。
最初に確認したいのは、受験したい自治体が参画自治体の一覧に入っているかどうかだ。入っていれば、筆記の日程が、早ければ5月になる。入っていなければ、これまでと同じ流れで準備できる。
静岡市・浜松市のように5月8日に筆記がある自治体では、いまの第一次選考(6月〜7月)より1か月〜2か月ほど早い。教職教養の仕上げ時期を、前倒しで考える必要がある。 勉強の進め方は教員採用試験の勉強はいつから始める?で整理している。ただし、この記事は共通化を前提にした日程ではない。受験する自治体の日程に合わせて読み替えてほしい。
共通問題の教養試験は、40問のうち30問が教職教養だ。協議会は、教職教養は教員資格認定試験の区分Ⅰと同様の難易度を想定すると示している。 協議会が公表した出題方針とモデル問題を見て、頻出分野や形式を確認しておくとよい。
共同実施が対象にするのは、第一次選考の筆記試験だ。論文や面接、実技などは、これまでどおり各自治体が実施する。静岡市のように、筆記の翌日に面接を行う自治体もある。 共通化で筆記の負担が変わっても、論文と面接で決まる部分は残る。論文の書き方は小論文対策はいつから始めるかが目安になる。論作AIでは、論文の添削と面接の練習ができる。
静岡市は、共同実施の対象に、大学3年生チャレンジ選考(小学校教員・中学校教員)を含めている。大阪府は、大学3年生等対象の選考と免除制度は従来どおり続くとしている。堺市は、前に書いた経過措置がある。 自治体によって扱いが違うので、前倒し受験や大学推薦を考えている人は、それぞれの記事と、自治体の要項で確認してほしい。
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