「大学の推薦がもらえれば、教採は受かる」。そう思っている人は少なくない。 実際の要項を読むと、少し違う。推薦で免除されるのは**主に第一次試験(の全部または一部)**で、第二次試験の面接や論文は残る。
この記事は、令和9年度採用(令和8年・2026年実施)の要項と公式ページをもとに、大学推薦を自治体別に比較したものだ。 制度は毎年変わる。日程や条件は、受験する年の最新の要項と、在籍する大学の案内で必ず確認してほしい。
なお、確認できなかったことは「確認できなかった」と書く。推薦の基準の中身や合格率など、公開資料に載っていないものは、数字を補っていない。
大学推薦(大学推薦特別選考)は、大学等が推薦した学生を対象に、第一次試験の全部または一部を免除する特別選考だ。自治体の要項に「免除」と明記されている。
推薦するのは大学だ。山形県は「学長又は学部長の推薦」、東京都は「学長が推薦する者」と書いている。本人が自治体に申し込むだけでは使えない。
東京都は「東京都での採用を第一希望とし、学長が推薦する者」、山形県は「山形県公立学校の教員として勤務することを第一志望」、福岡県は「福岡県公立学校教員(政令市を除く)を第一志望」としている。 この3自治体は、要項で第一志望を条件にしている。埼玉県・神奈川県・大阪市は、別の要項に推薦の細かい条件があるか、こちらで条件を確認できていないため、第一志望が必要かどうかは書かない。
推薦してもらう前に、受ける自治体を決めておく必要がある。
名前が似ている制度に、大学3年次受験(前倒し選考)がある。
| 比較 | 3年次受験 | 大学推薦 |
|---|---|---|
| 仕組み | 第一次試験の筆記を1年早く受ける | 大学の推薦で、第一次試験の全部または一部を免除される |
| 誰が決めるか | 本人が自治体に申し込む | 大学が推薦する(本人の出願も必要な自治体がある) |
| 免除の根拠 | 試験を受けて通過した実績 | 大学の推薦と、自治体の書類審査 |
3年次受験は教員採用試験の大学3年次受験(前倒し選考)とはで自治体別に整理している。 ただし、両者がきれいに分かれるとは限らない。神奈川県の大学推薦は対象が大学3年生等で、横浜市には推薦を前提にした3年生向けの選考もある。名前に「推薦」とあるだけでは、どちらの制度か判断できない。要項で対象学年と条件を確認してほしい。
令和9年度採用(令和8年実施)の要項で内容を確認できた6自治体を並べる。まず、誰が対象で、誰が推薦するかの表だ。
| 自治体 | 対象 | 推薦する大学等 |
|---|---|---|
| 東京都 | 対象の大学等の在籍者で、推薦基準を満たし、東京都での採用を第一希望とする者 | 学長。免許状を取得できる大学、大学院(教職大学院を含む)、短期大学、または都教委と連携協定を結んだ大学の教職大学院 |
| 埼玉県 | 小学校等、中学校等(美術・技術・家庭)、特別支援学校(特別支援教育)、高等学校等(数学・理科)などの区分ごとに指定がある | 県教委が指定する大学、大学院(教職大学院を含む)。高校の数学・理科は指定する大学院。全区分で指定する教職大学院も対象 |
| 神奈川県 | 大学3年生等 | 推薦する大学等の条件は、こちらでは確認できていない |
| 山形県 | 小学校、中学校、特別支援学校(小学部・中学部)、高等学校の指定教科。併願出願はできない | 対応する教諭一種免許状の課程認定を受けた大学、または専修免許状の課程認定を受けた大学院(学長又は学部長の推薦) |
| 福岡県 | 小学校教員(一般)、中学校教員(実施する全教科)、特別支援学校教員(実施する学部の全教科) | 対象の免許状の課程認定を受けた短期大学、大学、大学院、教職大学院 |
| 大阪市 | 小学校、中学校(国語、数学、理科、美術、技術、家庭、英語) | 小学校又は中学校教諭の普通免許状(一種又は専修)の課程認定を受けた大学・大学院 |
次に、免除される試験と、残る試験の表だ。
| 自治体 | 免除される試験 | 残る試験 |
|---|---|---|
| 東京都 | 第一次選考の教職教養 | 第一次: 専門教養(60分)・論文(70分)。第二次: 個人面接、実技試験(音楽・美術・保健体育・英語等の該当者) |
| 埼玉県 | 第1次試験 | 第2次: 個人面接・集団討論・論文試験・適性検査(実技は該当教科) |
| 神奈川県 | 第1次試験の内容は確認できなかった | 第2次: 模擬授業・個人面接。実技試験の日程もある(2月14日〜16日) |
| 山形県 | 第一次選考の教職教養・一般教養 | 第二次選考は、他の区分の第一次合格者と同様に扱う |
| 福岡県 | 第一次試験 | 第二次試験は一般選考の受験者と同じく実施 |
| 大阪市 | 第1次選考(合格者) | 第1次選考以外の内容は、大阪市の大学推薦特別選考実施要項で確認が必要(こちらでは未読) |
表の下に、補足を2点。
千葉県・千葉市にも「大学推薦特別選考」がある。令和9年度から中高の美術が追加された。中身は確認できていないので、受験する人は公式の案内ページと要項で確認してほしい。 大阪市には、別に「教職大学院推薦特別選考」もあり、合格者は第1次選考が免除される。
埼玉県は、大学推薦特別選考で第1次試験が免除される。第2次では個人面接・集団討論・論文試験・適性検査を受ける。論文は第2次試験①で、教育課題等に関する論述(60分・800字程度)だ。 埼玉県は、推薦の詳細を別途定める「大学推薦特別選考実施要項」で決めている。この別要項は、こちらでは確認できていない。
福岡県は、審査で要件を満たすと認められた者が第一次試験を免除される。第二次試験は一般選考の受験者と同じく実施される。
大阪市は、合格者が第1次選考を免除される。大学を通じて推薦書等を送るのに加えて、本人も電子申請で出願する。福岡県も、大学等が書類をまとめて送るほか、本人の電子申請による出願が必要で、期間内に申請がないと受け付けない。 大学が手続きをしてくれるから安心、とは言えない。本人の申請が別に要る自治体がある。
東京都で免除されるのは、教職教養だけだ。第一次選考では、専門教養(60分)と論文(70分)を受ける。第一次の会場は東京会場。 免除は書類審査で決まる。受験申込の完了後、大学から発行される「大学推薦者決定通知」を、マイページで提出する。免除になったかどうかは、6月中旬に交付される受験票で確認する。
山形県は、第一次選考の「教職教養・一般教養」が免除される。第二次選考は、他の区分の第一次合格者と同様に扱われる。
神奈川県の大学推薦制度は、対象が大学3年生等だ。試験の時期も他の自治体とまったく違い、令和9年度採用分は令和8年の1月から3月に進んだ。
| 日程 | 内容 |
|---|---|
| 令和8年1月15日 | 第1次試験結果通知 |
| 令和8年2月7日〜9日 | 第2次試験(模擬授業・個人面接) |
| 令和8年2月14日〜16日 | 第2次試験(実技) |
| 令和8年3月18日 | 最終合格発表 |
令和9年度採用分の応募者数は、小学校81人、中学校19人、高等学校10人、特別支援学校15人、養護教諭0人、栄養教諭0人で、計125人だった。 夏期試験の募集人員には、先に実施した大学推薦の募集人員は含まれない(実施要項p1)。
この表は、神奈川県の県採用分だ。横浜市・川崎市・相模原市は別の選考になる。第1次試験の内容と推薦要件は、こちらでは確認できていない。
「大学推薦 GPA」で検索する人は多い。ところが、確認した要項に**「GPA」という語は出てこない**。成績の基準が書かれていた山形県と福岡県は、「優」「良」の割合で示している。 この記事も、GPAに換算せず、要項どおりの表現で説明する。
| 自治体 | 成績に関する要項の記載 |
|---|---|
| 山形県 | 前年度末までの成績で、評価80〜100%(「優」、ABCなら「A」)が全体の60%以上ある者が望ましい |
| 福岡県 | 取得単位科目の評価が「優」「良」「可」のうち、「良」以上が8割以上 |
山形県は、成績を推薦要件の1つとして挙げている。ほかの要件は、山形県への第一志望、令和9年度の採用希望、出願時の在籍と令和9年3月31日までの卒業・修了見込み、県が求める教師像にふさわしい資質と能力だ。成績の項目だけが「望ましい」という書き方になっている。
福岡県は、評価を点数に換算している。優は80点以上、良は70点以上80点未満、可は60点以上70点未満だ。 大学院の区分から推薦される人は、大学院での成績で判断し、大学の成績は通算しない。
提出書類には、福岡県は「自己PR用紙」「成績内訳表」が含まれる。成績だけでなく、自己PRの書類も出す。
東京都は、推薦基準を含む詳細を「大学推薦実施要綱を別に定め、関係する大学等へ配布します」としている。公開されている要綱では、「詳細は在籍の大学等へ問い合わせてください」と案内している。 埼玉県は別の「大学推薦特別選考実施要項」、大阪市は「大学推薦特別選考実施要項」で詳細を定めている。この記事では、どちらも読めていない。
つまり、この3つの自治体の成績基準は、公開資料では確認できなかった。在籍する大学の教職課程の窓口に聞くのが確実だ。
推薦できる人数は、自治体で違う。
他の自治体の人数制限は、こちらでは確認できていない。
ここからは要項の事実ではなく、一般論だ。 推薦には人数の制限や成績の基準があるため、一般的に、大学の中でも学内の選考があることが多い。誰を推薦するかは、要項で決まらない。大学ごとの基準と手続きで決まる。
要項で分かるのは、自治体の要件までだ。大学がどんな基準を設けているかは、在籍する大学に聞くしかない。
大学推薦で楽になるのは筆記だ。論文や面接は、推薦でも受ける。要項の書き方を自治体別に見る。
| 自治体 | 推薦のあとに受ける、論文・面接など |
|---|---|
| 東京都 | 第一次で論文(70分)。第二次で個人面接 |
| 埼玉県 | 第2次で論文(60分・800字程度)、集団討論、個人面接、適性検査 |
| 神奈川県 | 第2次で模擬授業・個人面接。実技試験の日程もある |
| 山形県 | 第二次選考は、他の区分の第一次合格者と同様に扱う |
| 福岡県 | 第二次試験は、一般選考の受験者と同じく実施 |
| 大阪市 | 第1次選考は免除。第2次以降の内容は、大学推薦特別選考実施要項で確認が必要 |
山形県と福岡県は、第二次試験が一般の受験者と同じ扱いだと、要項に書いている。推薦だから第二次が軽くなる、とは書かれていない。
東京都は、推薦でも第一次で専門教養(60分)と論文(70分)を受ける。教職教養だけが免除される。 論文の形式は、東京都が公開している令和7年・8年の論文問題で確認できる。どちらも「(1)と(2)を合計して30行(1,050字)以内」「26行(910字)を超えること」という指定で、時間は70分だ。
つまり、東京都の推薦は、第一次選考の段階から論文で評価される。
埼玉県の論文は、第2次試験①の「教育課題等に関する内容についての論述」で、60分・800字程度だ。 第1次が免除されるので、推薦で受験する人は、第2次の論文・集団討論・個人面接・適性検査が勝負になる。
当サイトで確認した範囲では、福岡県と大阪市は論作文(論文)の試験を実施していない。 推薦で受ける第二次試験の具体的な内容は、それぞれの要項で確認してほしい。
つまり、大学推薦は合格を約束する制度ではない。免除される範囲は自治体によって違うが、確認した6自治体はいずれも第二次試験が残る。東京都は、それに加えて第一次で論文もある。
筆記の勉強が減るぶん、論文と面接に時間を回せる。そこが推薦の強みだ。逆に言えば、推薦の枠に入ったあとも、面接と論文の準備を後回しにはできない。 論文と面接は、読むだけでは上達しない。実際に書き、声に出して答え、直す練習が要る。
「大学推薦 落ちる」で検索する人も多い。要項に書かれていることと、書かれていないことを分けて整理する。
次の3自治体は、書類審査で推薦の要件を満たさないと判断された場合の扱いを書いている。
| 自治体 | 要項の記載 |
|---|---|
| 東京都 | 免除とならなかった場合は、一般選考への申込みとして扱う(6月中旬交付の受験票で確認) |
| 山形県 | 要件を満たさないと判断された場合は、一般選考として扱う(再手続きは原則不要) |
| 福岡県 | 要件を満たさない場合は、同一区分の一般選考に出願したものとみなす。審査結果は令和8年6月12日までに大学等へ発送 |
推薦の申込みが無効になって、受験の機会そのものがなくなるわけではない。東京・山形・福岡は、一般選考として受験を続けられる。 他の自治体の扱いは、確認した資料には書かれていなかった。
ここで混同しないでほしい。上の表は、書類審査で要件を満たさなかった場合の話だ。 推薦の選考(第二次試験など)で不合格になった場合の扱いや、そのことが一般選考で不利になるかどうかは、確認した要項のどこにも書かれていない。 こちらでは、有利とも不利とも断定できない。気になる人は、受験する自治体の問い合わせ窓口か、在籍する大学に確認するのがよい。
山形県の大学推薦特別選考の合格者は、大学院進学・修学継続のための採用の延期ができない。大学院に進む可能性がある人は、出願前に確認しておきたい。 選考結果は、本人に通知するほか、推薦した大学等にも通知される。
大学推薦は、自治体の出願より前に、大学内の手続きがある。まず、要項で日付を確認できた自治体を並べる。
| 自治体 | 日程(令和8年実施) |
|---|---|
| 福岡県 | 受付期間は3月27日(金)〜5月15日(金)消印有効。審査結果は6月12日(金)までに大学等へ発送 |
| 山形県 | 出願期間は4月20日(月)〜5月12日(火)。郵送書類は5月14日消印有効 |
| 東京都 | 6月中旬交付の受験票で、免除になったかを確認 |
| 神奈川県 | 第2次試験は2月7日〜9日(模擬授業・個人面接)と2月14日〜16日(実技)。最終合格発表は3月18日 |
埼玉県と大阪市の推薦の日程は、こちらでは確認できていない。
福岡県は、大学等が書類をまとめて送る手続きに加えて、本人の電子申請による出願も必要だ。期間内に申請がないと受け付けられない。大阪市も、大学を通じた書類送付のほかに本人の電子申請が要る。
これも要項の事実ではなく、一般的な話だ。 大学内で推薦の希望者を取りまとめる必要があるため、一般的に、学内の締切は自治体の締切より早く設定される。要項の期限だけを見て動くと、間に合わないことがある。
自治体の受付が3月や4月に始まる場合、大学内の動きはその前から始まっていると考えておいたほうがよい。在籍する大学のキャリア担当や教職課程の窓口に、早めに確認してほしい。
推薦を使うかどうかは、次の3点で考えると整理しやすい。
推薦が使えない、または見送る場合は、一般選考で受ける。なお、東京・山形・福岡は、書類審査で要件を満たさなかった場合は一般選考として扱うと書いている。推薦の選考に落ちたあとの扱いは、先に書いたとおり記載がない。
東京都は第一次、埼玉県は第2次で論文がある。推薦で筆記が減っても、論文の対策は別に必要だ。
論文は、書いて直す回数で伸びる。面接も同じで、声に出して答える練習を重ねるほど、言葉が出やすくなる。論作AIでは、論文の添削と面接の練習ができる。推薦で時間ができたら、その時間を練習に使ってほしい。
令和9年度採用(令和8年実施)の各自治体の要項・公式ページ。
教員採用試験の大学3年次受験(前倒し選考)を、令和8年度実施の各自治体の要項で比較。東京・埼玉・神奈川は3年次に筆記だけを受け、翌年は論文・面接が残る。名古屋市は3年次に小論文、横浜市・川崎市は二次まで受ける。通過率や申込時期、通過後の準備までまとめた。
教員採用試験の対策をいつから始めるべきか、試験全体のスケジュールから解説。一次試験は5〜7月に分散し自治体で最大2ヶ月差がある。筆記・小論文・面接・模擬授業それぞれに必要な期間と、働きながら/学生別の進め方、出遅れた場合の優先順位を元教員視点でまとめた。
【残り2ヶ月でも間に合う】2026年度教員採用試験は5月実施の自治体も登場。小論文に特化した「いつから・何をやるか」を3ヶ月/2ヶ月/1ヶ月の短期スケジュールで整理。最短で対策を完成させたい受験者向け。
東京都教員採用試験の論作文(小論文)は910字・70分・全校種共通の形式。公式呼称や採点基準から過去5年の出題テーマ、合格答案の書き方まで、元教員が実際の試験をもとにまとめた。7月試験に向けた学習スケジュールも掲載。
埼玉県教採の論作文(小論文)(2次試験・800字・60分)を完全攻略。過去5年テーマ・模範解答・「埼玉県が求める教師像」の織り込み方・採点基準まで、元教員が徹底解説。
愛媛県前期1次(7/18)は教職専門35問20分+専門教科が中心で小論文(論作文)は出ない。残り9日で教職専門・専門教科を仕上げ、1次通過後すぐ8/18二次の小論文に切り替えるロードマップを元小学校教員監修でまとめた。
合格に必要なテーマ・自治体・用語を、ハブページからまとめて辿れます。