養護教諭の教員採用試験は、自治体によって募集人数、試験の構成、免許や併願の扱いが違う。とくに保健師資格の扱い、併願、看護師経験の優遇は自治体ごとに異なるため、出願前に要項で確認する必要がある。
この記事は、令和9年度採用(令和8年・2026年実施)の要項をもとに、東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県(千葉市を含む)・愛知県・大阪府・大阪市の養護教諭の試験を比較したものだ。制度は毎年変わる。受験する年の最新の要項で、必ず確認してほしい。
倍率や合格率の数字は、この記事では扱わない。倍率は教員採用試験 倍率・難易度ランキング【2026年最新】全国67自治体・校種別|受かりやすい県・難しい県の選び方を参照してほしい。また、要項で確認できなかったことは、確認できなかったと書く。なお、埼玉県は「養護教員」、ほかの自治体は「養護教諭」と呼んでおり、表では自治体の用語のままにしている。
まず、養護教諭の募集人数と配属先を並べる。
| 自治体 | 養護教諭の募集 | 配属先(要項の記載) |
|---|---|---|
| 東京都 | 採用見込者数120名(一般選考) | 区市町村立小学校、都立小学校、区市町村立中学校、都立中学校、区市町村立義務教育学校、都立高校ほか |
| 神奈川県 | 27人程度 | 市町村立の小学校・中学校・高等学校・特別支援学校、県立の高等学校・中等教育学校・特別支援学校 |
| 埼玉県 | 養護教員 35名 | 小学校・中学校・義務教育学校・高等学校・特別支援学校のいずれか |
| 千葉県・千葉市 | 約60人 | 確認できなかった |
| 愛知県 | 約30人(養護教諭(小・中学校)約23人、養護教諭(県立学校)約7人) | 確認できなかった |
| 大阪府 | 採用予定数は要項の表から読み取れず、確認できなかった | 府内市町村立の小学校・中学校・義務教育学校、大阪府立の高等学校・中学校・支援学校。第2次合格後に希望校種を申し出る |
| 大阪市 | 確認していない | 確認できなかった |
募集人数の差は大きい。東京都が120名、千葉県・千葉市が約60人、埼玉県が35名、神奈川県が27人程度、愛知県が約30人という並びだ。ただし、これは要項に載っている予定の数であり、変わることがある。人数の大小だけで、受けやすさや難しさは判断できない。
次に、試験の構成を比較する。確認した範囲では、養護教諭は他の校種と同じ表に載っており、養護教諭だけ別の試験が用意されているわけではない。そのうえで、養護教諭向けの専門試験や、養護教諭向けのテーマが設けられている自治体がある。
| 自治体 | 第1次 | 第2次 | 論文 |
|---|---|---|---|
| 東京都 | 教職教養(60分)・専門教養(60分)・論文(70分) | 個人面接 | あり(第1次、70分) |
| 神奈川県 | 養護に関する専門試験、一般教養・教職専門試験(60分)、論文(60分) | 模擬授業(導入から展開の最初の10分間)・個人面接 | あり(60分・800字程度。第2次扱いだが第1次試験日に実施) |
| 埼玉県 | 筆答試験(専門分野100点、一般教養・教職科目100点) | 個人面接100点(「場面指導」を含む質疑応答)・集団討論90点・論文50点・適性検査 | あり(第2次、60分・800字程度) |
| 千葉県・千葉市 | 教職教養・専門教科・集団面接(一般選考。小論文は課されない) | 個別面接・模擬授業・適性検査・実技検査(区分別の細かい記載は確認できなかった) | 一般選考は第1次に小論文なし |
| 愛知県 | 教職・教養、教科専門、小論文 | 個人面接 | あり(第1次、小論文) |
| 大阪府・大阪市 | 確認していない | 確認していない | 確認していない |
論文や小論文が課されるのは、東京都・神奈川県・埼玉県・愛知県だ。千葉県の一般選考は、第1次に小論文がない。ただし、千葉県の養護教諭特別選考では、第1次が小論文のみになる(後述)。
実技試験は、東京都・愛知県・埼玉県の要項で、養護教諭(埼玉県は養護教員)は対象外と確認できた。千葉県の第2次には実技検査が含まれるが、区分別の細かい記載は確認できなかった。
東京都の養護教諭は、一般選考の募集区分の1つとして、要綱の募集の表に載っている。そのため、表の「第一次 教職教養・専門教養・論文、第二次 個人面接」は、一般選考の試験として養護教諭にも当てはまると読める。ただし、要綱の表の文字の一部が読み取れず、養護教諭の欄に書かれた「選考方法」の表記までは直接確認できなかった。
養護教諭に固有の内容が要項に書かれているのは、確認できた範囲では神奈川県が中心だ。第1次に「養護に関する専門試験」があり、論文のテーマも各校種・養護教諭・栄養教諭に関するものとされている。
神奈川県は、第2次の模擬授業でも養護教諭向けのテーマを示している。令和8年度実施(夏期)の養護教諭のテーマは、次のとおりだ。
「児童・生徒等の現状と課題を養護教諭の専門的な視点でとらえ、『主体的・対話的で深い学び』の実現を通して、豊かな心や健やかな体の育成をめざした授業」
出典は、神奈川県の「模擬授業の内容について(夏期試験)」のページだ。東京都の専門教養と埼玉県の専門分野は、出題範囲までは確認できなかった。過去問の傾向は、今回は要項のみを確認したので扱わない。
養護教諭ならではの制度のうち、とくに注意が必要なのが、保健師資格から免許を取る道の扱いだ。自治体によって、条件つきで認める、事前相談を求める、受験できないとする、と扱いが分かれている。
| 自治体 | 保健師資格を基礎に免許を取る場合 |
|---|---|
| 千葉県・千葉市 | 令和8年3月までに保健師国家試験に合格していること |
| 神奈川県 | 養護教諭二種免許状を「保健師免許を基礎資格とし、必要な単位修得をもって取得」する場合は、免許状を申請する教育委員会にあらかじめ相談 |
| 大阪府 | 令和8年度中に実施される保健師国家試験の合格により得られる資格を基礎として養護教諭普通免許状を取得しようとする場合は、令和9年4月1日までに免許状を取得見込みであっても、令和9年度のテストを受験することはできない |
| 大阪市 | 令和8年度中に実施される保健師国家試験の合格により得られる資格を基礎として養護教諭の普通免許状を取得しようとする人は、対象から除かれる |
| 東京都 | 確認できなかった |
| 埼玉県 | 確認できなかった |
| 愛知県 | 確認できなかった |
千葉県は、令和8年3月までの保健師国家試験合格を条件にしている。これに対し、大阪府と大阪市は、令和8年度中に実施される保健師国家試験の合格によって得られる資格を基礎に免許を取る人を、受験できない扱いにしている。大阪府は、免許状を令和9年4月1日までに取得見込みであっても受験できないと明記している。
神奈川県は、そのどちらでもなく、二種免許状を保健師免許から取る場合に、免許状を申請する教育委員会に事前に相談するよう求めている。
表に載せていない自治体は、確認できなかったという意味であり、制限が無いという意味ではない。保健師資格を使う人は、出願前に、志望する自治体の要項と教育委員会の案内を確認しておく必要がある。
保健師資格によらない場合の免許の要件も、要項に書かれている範囲で挙げておく。
養護教諭の併願の可否も、自治体で分かれる。
| 自治体 | 養護教諭の併願 |
|---|---|
| 大阪府 | 養護教諭で出願した場合、併願できる校種・教科はすべて不可 |
| 埼玉県 | 養護教員の志願者は、申請により小学校等教員を併願できる。第2次不合格者で併願を申請した者のうち成績が上位の者は、小学校等教員の第2次合格者として名簿に登載される。併願の受験資格は小学校教諭普通免許状(令和9年3月31日までに取得見込みを含む)。併願者は養護教員の試験だけを受験し、小学校等教員の試験は受けなくてよい |
| 千葉県・千葉市 | 小学校・中学校・高等学校・特別支援教育を併願できる。併願する学校種・教科の普通免許状を取得しているか、令和9年3月31日までに取得見込みの者 |
| 大阪市 | 「養護教諭(幼)」と「養護教諭(小中)」の2区分を、志望順位をつけて併願できる |
| 愛知県 | 受験区分・教科は1つだけ出願できる(養護教諭は小・中学校約23人、県立学校約7人の2区分) |
| 東京都 | 確認できなかった |
| 神奈川県 | 確認できなかった |
大阪府は併願ができない。一方、埼玉県と千葉県は、他の校種を併願できる。ただし、どちらも併願先の免許状が条件になっている。
埼玉県は、併願を申請しても受ける試験は養護教員の試験だけで、不合格でも成績が上位であれば、小学校等教員の第2次合格者として名簿に載る。
大阪市の併願は、校種をまたぐものではなく、養護教諭の2区分(幼、小中)の間の併願だ。第1志望の第1次で不合格になっても、得点が第2志望の合格基準点に達し、かつ合格最低点を上回れば、第2志望の第2次を受験できる。併願の申請は出願時のみだ。また、教諭経験者特別選考で2区分を併願するには、幼稚園・小学校で正規任用の養護教諭として勤務した期間が、それぞれ通算1年以上必要と書かれている。
愛知県は、小・中学校と県立学校のどちらか一方の区分だけ出願できる。
看護師としての経験を評価する制度は、確認した範囲では千葉県と大阪府にあった。
千葉県・千葉市の「養護教諭特別選考」は、看護師としての実務経験を児童生徒の指導に生かすための選考だ。看護師経験を有し、児童生徒の養護に意欲のある人が対象になる。
一般選考の第1次には小論文が無いのに対し、特別選考は第1次が小論文のみで、選考の方法がまったく異なる。第2次の内容は、区分別の細かい記載を確認できなかった。
大阪府は、加点区分Hとして、養護教諭の看護師免許所有者に、第1次選考の得点に10点を加点する。
国家試験に合格しているだけでは足りず、免許証の交付を受けているかどうかが分かれ目になる。
東京都・神奈川県・埼玉県・愛知県・大阪市は、看護師経験の優遇について、今回確認した範囲では記載を確認できなかった。制度が無いと言い切ることはできないので、志望する自治体の要項で確認してほしい。
ここからは、要項の整理ではなく、一般論として書く。
試験の構成を見ると、東京都・神奈川県・埼玉県・愛知県では論文が課されるため、準備の中心の1つにしたい。形式は自治体で違い、東京都は70分、神奈川県と埼玉県は60分・800字程度と、要項に書かれている。養護教諭のテーマで書く練習は、養護教諭の教員採用試験 小論文対策|頻出テーマ・模範解答・NG例まとめ【2027年度版】で扱っている。全般は教員採用試験 論作文(小論文)の書き方|800字の構成・採点基準・頻出テーマを元教員が解説が参考になる。
自治体別の論作文は、東京都教員採用試験 論作文(小論文)対策|910字70分の形式・過去問・模範解答まとめ【2027年度対策】、神奈川県教員採用試験 小論文とは|形式・過去問・対策を元教員がまとめた、【2026】埼玉県教採 論作文(小論文)対策|2次試験・800字・合格答案【2027年度対策】にまとめている。
面接や場面指導も、第2次の対策として欠かせないと考えておきたい。埼玉県は個人面接に「場面指導」を含む。養護教諭の場面指導は、教員採用試験 場面指導 完全攻略|頻出テーマ20例・校種別例文22選・1分構想の手順・NG行動を元教員が解説の養護教諭の節で扱っている。面接全般は、【2026年最新】教員採用試験 面接対策|個人・集団・場面指導の頻出質問と回答例を完全解説にまとめている。
年齢の条件は教員採用試験の年齢制限は何歳まで?|東京・神奈川・埼玉・千葉・愛知・大阪の要項で比較【2026年実施版】、合格後の流れは教員採用試験の合格後の流れ|採用候補者名簿・補欠合格・辞退・大学院進学の猶予を自治体別に整理【2026年実施版】で整理している。
最後に、出願前に確認したい項目を並べる。要項の内容を踏まえた、編集部の整理だ。
論文が課される自治体を受ける養護教諭の志望者は、時間内に800字前後でまとめる練習が必要になる。論作AIでは、論文の添削ができる。養護教諭のテーマで書いた答案を見直し、構成や表現を直す練習に使ってもらえれば幸いだ。
また、面接や場面指導の練習にも使える。養護教諭の場面指導は、短時間で自分の考えを話す練習が要ると考えておきたい。
令和9年度採用(令和8年実施)の各自治体の要項・公式ページ。
養護教諭の教採小論文は一般教諭と別物。保健室経営・組織連携・SOSサインへの対応など養護教諭特有の観点を軸に、頻出テーマ5パターン・模範解答・NG例を元教員視点で徹底解説。自治体別の出題差異にも対応。
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