「いまは正規の教員として働いている。別の自治体で、もう一度、採用試験を受けたい」。
結婚や介護、地元に戻る事情などで、こう考える人は少なくない。このとき気になるのは、正規教員としての経験は、試験で考慮されるのか、第一次試験は免除になるのかだ。
答えは、自治体ごとに違う。この記事は、教育委員会の公式資料だけをもとに、2026年実施の要項で、現職の正規教員向けの選考がどう決められているかを整理したものだ。要項の本文を確認できたのは、東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、愛知県、大阪府、福岡県の7つ。
先に、この記事の「現職教員」の意味を決めておく。この記事では、試験を受ける時点で、国公立学校(大阪府は私立学校も)に、正規教員として勤務している人を、現職教員と呼ぶ。講師や、すでに辞めた人(元教諭)の選考は、扱わない。講師経験者は、別の記事に整理している。
年度の呼び方は、次のとおり。7つは、すべて2026年に実施された試験だ。
| 自治体 | 要項の表記 | 実施年 |
|---|---|---|
| 東京都 | 令和8年度選考(9年度採用) | 2026年 |
| 神奈川県 | 令和8年度実施 | 2026年 |
| 埼玉県・千葉県・愛知県・大阪府・福岡県 | 令和9年度(令和8年度実施)/愛知県は2027年度採用 | 2026年 |
2027年実施の要項は、確認した範囲では、まだ出ていない。選考区分の名前も、免除の内容も、毎年変わることがある。受験する年の最新の資料で、必ず確認してほしい。
| 自治体 | 選考区分の名前 | 必要な勤務 | 第一次(筆記など) |
|---|---|---|---|
| 東京都 | 特例選考① | 国公立の正規教員として3年以上(過去の経験でもよい) | 教職教養のみ免除。専門教養と論文は受ける |
| 神奈川県 | 特別選考⑧ | 国公立の正規教員として、採用から引き続き3年以上 | すべて免除 |
| 埼玉県 | 本採用教員経験者特別選考 | 正規(本採用)として2年以上 | すべて免除 |
| 千葉県 | 他県等現職特例選考 | 他県等の国公立の正規教員として2年以上 | すべて免除 |
| 愛知県 | 現職教諭特別選考 | 国立大学法人設置校または公立の正規教員として3年以上 | 教職・教養のみ免除。教科専門と小論文は受ける |
| 大阪府 | 現職教諭対象の選考 | 国公私立の正規教員として2年以上(見込み含む) | すべて免除。第2次の筆答・実技も免除 |
| 福岡県 | 現職教員特別選考 | 正規教員の経験あり(年数の指定は書かれていない) | 教職教養などは免除。専門教科は高等学校教員のみ |
第一次がすべて免除なのは、神奈川県、埼玉県、千葉県、大阪府。 東京都と愛知県は、教職教養だけが免除で、専門の試験と論文は、現職でも受ける。
東京都で、他の自治体の現職教員が使うのは、**特例選考①(国公立学校における正規任用教員経験者)**だ。
対象
名前のとおり「経験者」の区分なので、いま在職している人も、辞めた人も、同じ区分で受ける。要項のQ&Aに、「現職の正規任用教員でも、必要な職務経験を満たしていれば受験可能」と書かれている。
試験
注意したい点
もう一つの入口:キャリア採用選考
経験が長い人には、別の選考もある。国公私立学校で正規教員の経験が8年以上、かつ令和9年3月31日現在で満30歳以上の人が、一般選考や特例選考と併せて申し込める。合格すると、主任教諭(3級職)として任用される。採用見込みは、主任教諭と主任養護教諭で20名程度だ。
受ける試験が増える。第一次選考とは別日程(7月12日)で、**キャリア論文(90分、1,500字程度)**がある。主任教諭の合格に届かなくても、基準を満たせば、教諭として合格になる。
神奈川県は、**特別選考⑧(国公立学校正規教員)**がある。
対象
「同一の教職経験」は、受験する校種等・教科の免許状を取得したあとに、同じ校種等・教科の国公立学校の正規教員として勤務した経験のことだ。小学校・中学校の特別支援学級での経験は、それぞれ小学校・中学校の教科の経験として扱われる。
試験
注意したい点
Q&Aに、小学校の区分で受けたい人が、中学校の経験を理由に⑧を申し込むことはできない、と書かれている。資格要件が、受験する校種等・教科の勤務経験に限られるためだ。合格後(10月中旬以降)に、資格要件を満たすことを確認できる書類を出す。
埼玉県は、教職経験者特別選考の中の「本採用教員経験者特別選考」だ。
対象(次のアまたはイ)
県外の現職は、イにあたる。「引き続き」とは、現に学校に勤務している人のことだ。
試験
注意したい点
千葉県は、名前のとおり、他県等の現職に向けた区分がある。
対象(次の3つすべて)
試験
秋選考と冬選考がある
他県等現職特例選考は、8月の第2次選考のほかに、**秋選考(10月3日(土))と冬選考(令和9年1月8日(金))**が、予定として要項に書かれている。冬選考で受験したい人は、県のホームページなどで案内される内容を確認して志願する。同じ年度に志願できるのは、一度だけだ。
注意したい点
愛知県は、現職教諭特別選考だ。全校種が対象になる。
対象(次の①と②の両方)
試験
書類
出願時に必要な書類は無い。合格したとき・補欠になったときに、任用期間と現職であることを証明する書類(在職期間証明書、職歴証明書など)を出す。写しの場合は、原本証明が必要だ。
大阪府は、現職教諭対象の選考で、免除の範囲が広い。
対象(次の①と②の両方)
試験
注意したい点
福岡県は、特別選考のⅠが現職教員特別選考だ。
対象(次の①と②の両方)
要項には、勤務年数の指定が書かれていない。
試験
小学校・中学校などの受験者は、筆記の試験がなく、個人面接が中心になる。
関東会場でも受けられる
小学校・中学校・特別支援学校教員の現職教員特別選考は、福岡会場のほかに、**関東会場(東京都千代田区)**でも行われる。2026年は、11月8日(日)の実施で、出願は9月1日から9月24日までだった。福岡会場と関東会場の両方は受けられず、ほかの試験区分との併願もできない。関東会場で、どんな試験が行われるかは、県のページに日程だけで、中身は確認できなかった。
東京都3年、神奈川県3年(引き続き)、愛知県3年、埼玉県2年、千葉県2年、大阪府2年。福岡県だけは、年数の指定が書かれていない。年数の数え方は、自治体ごとに少しずつ違う。休職や育児休業の期間を含めない点は、東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、愛知県、大阪府で共通している。
免除があっても、第二次の面接などは、すべての自治体で受ける。神奈川県は模擬授業と個人面接、千葉県は個別面接のみ、埼玉県は個人面接・集団討論・論文・適性検査、愛知県と東京都は個人面接と一部の実技、大阪府は面接テスト、福岡県は個人面接(高等学校は模擬授業と英語面接も)だ。
小学校の免許で勤務しているのに、中学校の区分で受けたい、というときは、どの自治体でも使えるとは限らない。
現職向けの区分で、私立学校の在職を対象にしているのは、確認した範囲では大阪府だけだ。東京都は、特例選考①は国公立学校が対象だが、国公私立で8年以上の人は、キャリア採用選考に申し込める。埼玉県は、私立学校の経験を対象としていない。
任期付や非常勤、講師は、対象外の自治体が多い。正規任用であることが、どの自治体でも前提だ。
「令和8年4月1日現在」「令和8年3月31日まで」「令和9年3月31日時点」と、基準日が自治体で違う。休職や育児休業の期間が、年数から外れる場合もある。
「一次免除」と書いてあっても、第二次の面接や模擬授業は残る。模擬授業があるか、論文があるかは、自治体で違う。志望する自治体の第二次の内容を、先に確認する。
愛知県は、出願時の書類が無く、合格時・補欠時に在職の証明を出す。東京都は、名簿に載ったあとの確認で、在職を確認できなければ削除される。神奈川県は、合格後に書類を出す。千葉県は、第1次免除者の書類を、6月19日から7月3日までに出す。いつ、何の証明が要るかは、自治体で違う。勤務先に証明を頼む時期も、考えておく。
臨時講師・非常勤講師の経験は、教員採用試験で一次免除や加点になるのか。2026年実施の福井県・兵庫県・岡山県・広島県・広島市・大分県の要項で、必要な経験の長さ、非常勤の扱い、今も勤務している必要があるかを比較する。
教員採用試験の「社会人枠」を、令和8年(2026年)実施の東京・神奈川・埼玉・千葉・愛知・大阪府・大阪市の要項で比較。筆記が免除される型、10点加点の型、試験は一般と同じ型の3つに分かれる。必要な勤務年数(2〜5年)、正規職員に限るか、免許が無くても受けられるかまで一覧にした。
教員採用試験の年齢制限を、令和8年(2026年)実施の7自治体の要項で比較。多くは昭和40年4月2日以降生まれ(令和9年4月1日時点で満61歳以下の目安)だが、愛知県は昭和42年4月2日以降、東京都の一般選考は昭和62年4月2日以降と大きく違う。東京で40歳以上が受ける特例選考の仕組みもまとめた。
令和7年度(2025年実施)文部科学省データで全国67自治体の倍率一覧。全国平均2.9倍・小学校2.0倍と過去最低を更新。倍率が低い県ランキング、出願倍率と最終倍率の違い、養護教諭など校種別データ、元小学校教員が「受かりやすい県」を選ぶ6つの軸まで解説。
教員採用試験の2次に合格した後どうなるのかを、令和8年(2026年)実施の7自治体の要項で整理。合格者は採用候補者名簿に登載され、神奈川・千葉は原則全員採用と明記している。愛知県の補欠合格の扱い、大学院進学による辞退・猶予の申出期限、不合格でも成績上位なら載る講師名簿までまとめた。
教員採用試験で、第一希望のほかに、第二希望の校種・教科を持てるのか。2026年実施の東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県・大阪府の要項で、併願できる組み合わせ、必要な免許、併願した場合の判定のされ方を比較する。
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