愛媛県の教職教養は、全国的に見ても相当に特殊な設計になっている。
教職専門は100点、専門教科は400点。しかもその500点は2次で50点に換算される。
つまり1次は「通過」が目的の関門で、勝負は2次にある。 加えて1次の中でも教職専門は100点、専門教科は400点で、比重は1:4だ。 そして出題は教育法規や教育史が少なく、学習指導要領や生徒指導提要など「教育原理」と呼ばれる分野に集中する。
この構造を理解しないまま「全分野まんべんなく対策する」という方針で進めると、圧倒的に非効率になる。 さらに今年度から前期第1次の集団面接が廃止され、小論文は2次にある。去年までの情報のまま準備すると配分を誤る。
この記事では愛媛県の教職教養の試験形式・出題傾向・愛媛ならではの教育施策・学習プランを整理した。 限られた時間で最大の得点を取るための地図として使ってほしい。
愛媛県の一次選考における教職専門(教職教養)の試験構成は以下の通りだ。
愛媛県の要項での正式名称は「教職専門科目」だ。「教職教養」という語は志願要項に出てこない。
なお、問題数や試験時間(「35問・20分」といった数字)は志願要項に記載がない。 対策サイトで見かける数字はあるが、公式では確認できないので鵜呑みにしないでほしい。 問題用紙の持ち帰りが認められているので、実物の分量は受験すれば分かる。
愛媛県の対策設計を決めるのがこの表だ。志願要項の「前期選考試験における配点」から。
前期第1次選考試験
| 科目 | 配点 |
|---|---|
| 教職専門科目 | 100点 |
| 専門教科 | 400点 |
| 合計 | 500点 |
前期第2次選考試験
| 項目 | 実技なし | 実技あり |
|---|---|---|
| 1次総得点の換算点 | 50点 | 50点 |
| 小論文 | 20点 | 20点 |
| 面接 | 80点 | 60点 |
| 実技試験等 | — | 20点 |
| 合計 | 150点 | 150点 |
要項の注記にこうある。
前期第1次選考試験の総得点(500点+加点)を10分の1に換算する。
1次で積み上げた500点が、2次では50点分にしかならない。 2次の150点満点のうち、1次の貯金は3分の1。残り100点は小論文と面接(+実技)で決まる。
ここから導ける結論は2つある。
教職専門に時間を注ぎすぎるのは、配点構造から見て効率が悪い。落とさない程度に仕上げて、専門教科と2次対策に回すのが合理的だ。
小論文は2次試験だ。1次ではない。
| 選考 | 内容 |
|---|---|
| 前期第1次 | 筆記試験(教職専門科目+専門教科) |
| 前期第2次 | 適性検査、筆記試験(小論文)、面接試験、実技試験等 |
一次に小論文があると思って準備を組むと配分を誤る。小論文は1次を通ってから、2次までの期間で仕上げる科目だ。
そして小論文の配点は20点。2次150点のうち13%にあたる。面接(80点/実技ありは60点)と比べると小さいが、後述するとおり準備した人としない人の差が出やすい枠でもある。
愛媛県は公式にこう告知している。
今年度より前期第1次選考試験において、集団面接が廃止となりました。
これにより、前期第1次は筆記試験1日のみになった。従来2日間だった日程が1日に短縮されている。
去年までの体験記や対策情報は「1次に面接がある」前提で書かれていることがあるので、注意してほしい。
| 項目 | 期日 |
|---|---|
| 前期第1次選考試験 | 令和8年7月18日(土) |
| 前期第1次 結果発表 | 令和8年8月7日(金) マイページ通知+県HP掲載 |
| 前期第2次選考試験 | 令和8年8月18日(火)〜21日(金) のうち指定した日 |
| 最終合格発表 | 9月中旬(予定) |
1次発表の8月7日から2次まで、11〜14日しかない。 小論文20点と面接80点の準備を、この短期間で仕上げることになる。1次が終わった時点で2次の準備に入れる状態にしておきたい。
要項の「前期選考試験問題等の取扱い」にこうある。
前期第1次選考試験の筆記試験問題、解答及び評価の観点並びに前期第2次選考試験の筆記試験(小論文)問題、実技試験の内容、採点基準及び評価基準並びに面接試験の評価基準の閲覧又は写しの交付については、愛媛県情報公開条例(平成10年愛媛県条例第27号)に基づく公開請求の手続による。
小論文の問題と採点基準、面接の評価基準まで請求できるという点が大きい。 Web公開ではなく情報公開請求という手間はかかるが、本気で狙うなら取りに行く価値がある情報だ。
出典: 令和9年度愛媛県公立学校教員採用選考試験 志願要項(愛媛県教育委員会)
愛媛県の教職専門は、出題の傾向が他の自治体と明らかに異なる。
| 分野 | 出題数の目安 | コメント |
|---|---|---|
| 教育原理(学習指導要領・生徒指導等) | 全体の約7割 | 圧倒的最重要 |
| 教育法規(教育基本法・学校教育法等) | 1〜2割程度 | 頻出箇所が絞られている |
| 教育史・教育心理 | 1〜2割程度(教育史中心、心理はほぼゼロ) | 主要人物と著作の対応を押さえる |
教育心理の出題がほぼないこと、教育史も主要人物に絞られていることが特徴だ。 他県受験との兼ね合いで「心理も幅広くやっておこう」という誘惑にかられやすいが、愛媛受験においては教育原理にかける時間比率を意識的に引き上げる必要がある。
「教育原理」の内訳は学習指導要領・生徒指導提要・各種答申・近年の教育施策が中心になる。
具体的には以下のような資料が出題範囲に入る。
これらはいずれも「文書名を知っているだけ」では太刀打ちできない。 キーワードと趣旨を正確に結びつけた上で「見て即答できる」状態にしておきたい。
法規は出題数こそ多くないが、頻出箇所が絞られているため、捨てるのはもったいない。
よく出る法律・条文:
「どの法律の何条に何が書かれているか」という対応を整理しておくことが重要だ。
愛媛県の教職専門は、学習指導要領を中心とした教育原理の問題が毎年安定して出題される。 以下は過去の試験で繰り返し確認されている頻出テーマだ。
「主体的・対話的で深い学び」の定義と授業改善の方向性は、毎年何らかの形で出題される。
受験する校種の「各教科の目標」も確認しておくこと。 総則だけ仕上げて各教科目標を後回しにすると、本番で見慣れない選択肢に動揺しやすい。
2022年の改訂で三層の支援構造が新設されたことが、近年の試験で最もよく問われる改訂ポイントだ。
旧版の2階層から3階層への変更という「改訂前後の違い」を問う形式で出題されることがある。
個別最適な学びと協働的な学びの一体的充実というフレームが頻出だ。 「個別最適な学び」の定義(指導の個別化+学習の個性化)を正確に言えるかどうかが問われる。
こども基本法は2023年施行と比較的新しい。 子どもの意見表明権・最善の利益という概念を子どもの権利条約と合わせて整理しておく。
COCOLOプランの「魅力ある学校づくり」「学びの多様化学校(不登校特例校)」は、不登校・教育機会確保の文脈と合わせて出題されやすい。
いじめの法律上の定義は正確に覚えておく必要がある。 「当該児童等が心身の苦痛を感じているもの」という主観的な判断が基準になっているという点が選択肢で引っかけに使われやすい。
愛媛県の教員採用試験では、県の教育施策や教師像への理解が問われる場面がある。 教職専門の択一問題には直接出ない場合でも、小論文・面接での評価軸に確実に影響する内容だ。
正式名称は「愛媛県教育振興に関する大綱 〜愛顔あふれる『教育立県えひめ』の実現〜」で、計画期間は令和5〜8年度。 つまり今年度が最終年度にあたる。来年度以降は新しい大綱に切り替わる可能性が高いので、次年度受験の人は改訂の有無を確認してほしい。
大綱が目指す方向として、次の言葉が掲げられている。
優れた人格と能力を兼ね備えた有為な人財を輩出すること 教育で身を立てる県となる
「人材」ではなく「人財」と書くのが愛媛の表記だ。細かいが、そのまま引用する場面では合わせておきたい。
この大綱を年度ごとに具体化したのが「令和8年度 愛媛県教育基本方針・重点施策」で、7つの柱で構成されている。
7本すべてを暗記する必要はないが、1〜5が学校教育の中身、6が地域連携、7が生涯学習という並びの構造は押さえておくといい。 面接で「愛媛県の教育で共感するところ」を聞かれたとき、この7本のどれかに紐づけて話せると、方針を読んでいることが伝わる。
特に**5番の「教職員の働きがい」**が柱として立っているのは注目に値する。子どもへの施策だけでなく、教員自身の働き方を独立した柱に置いている県は多くない。
「愛顔(えがお)」というキーワードは愛媛の教育施策で繰り返し登場する。 「愛顔あふれる教育」がどういう方向性を持っているかを自分の言葉で語れる状態にしておくと、面接での深みが変わってくる。
出典: 愛媛県教育振興に関する大綱/令和8年度 愛媛県教育基本方針・重点施策(愛媛県教育委員会)
愛媛県が展開する体験活動推進事業のひとつ。 全公立中学校を対象に、企業職場体験や農林水産体験を5日間行い、地元で働くことの意義・地域産業の魅力を体感させるという内容だ。
「地域の子どもは地域で育てる」という機運を醸成する取り組みとして明示されており、キャリア教育・地域連携という観点での教育実践に興味がある人には面接での実際の発言とつながる内容だ。
愛媛県は西日本の中でも離島・へき地の学校が比較的多い地域だ。 今治市沖のしまなみ海道沿いの島々(大島・伯方島・大三島等)、宇和島沖の離島などに公立学校が存在し、教員としての赴任先に含まれる可能性がある。
「どんな環境でも子どもに向き合える教師か」という問いは、愛媛でも面接で問われやすい。 「離島や小規模校での教育をどう捉えるか」という具体的なイメージを事前に持っておくことが、面接の準備として重要になる。
愛媛県教育委員会が公式に示している教師像の要素には以下が含まれる。
一見すると当たり前の言葉に見えるが、「なぜ愛顔(えがお)か」「なぜあいさつか」という文脈を理解した上で語れるかどうかが、抽象的な回答と深みのある回答の分かれ目になる。 愛媛の子どもたちにとってどんな教師が必要かを自分なりに考えてみる時間を、試験対策のどこかで作ってほしい。
愛媛県の教職専門で実際に出題頻度が高いテーマを整理した。 「見て即答できる状態か」を確認しながら読んでほしい。
資質・能力の三つの柱、主体的・対話的で深い学び、カリキュラム・マネジメント、社会に開かれた教育課程。 受験する校種の各教科目標もセットで確認しておく。
三層の支援構造の新設。 発達支持的・課題予防的・困難課題対応的という三層の内容と対象を整理する。
個別最適な学びの定義(指導の個別化+学習の個性化)と協働的な学びの一体的充実。
いじめの法律上の定義・学校いじめ防止基本方針の策定義務・重大事態への対応。 「主観的な苦痛を基準にする」という定義の特徴を正確に覚えておく。
合理的配慮の定義と提供義務、個別の教育支援計画と個別の指導計画の違い。 インクルーシブ教育という概念の出発点(障害者権利条約第24条)を押さえておく。
2023年施行。 子どもの権利条約と合わせて「子どもの意見表明権」「最善の利益」の概念を整理する。
COCOLOプランのキーワード(魅力ある学校づくり・学びの多様化学校・校内教育支援センター)。 不登校の定義(年間30日以上の欠席)と教育機会確保法の基本理念も確認する。
第1条(教育の目的)・第2条(教育の目標)・第9条(教員)・第16条(教育行政)。 条文番号と内容の対応を整理する。
1人1台端末の整備後の「活用フェーズ」。 情報活用能力が学習の基盤として位置づけられていること、デジタル教科書の動向。
コメニウス・ルソー・ペスタロッチ・ヘルバルト・フレーベルの5人。 著作名と主張を結びつけておく。 愛媛では心理系の出題がほぼないため、教育史の5人に絞るのが効率的だ。
愛媛県の一次試験は通常7月実施のため、3か月前は4月初旬になる。
試験の設計上「ゆっくり考えながら解く練習」はほとんど意味をなさない。 「見て即答」の精度をどれだけ上げられるかという一点に、対策の全てが収束していく。
この時期の目的は「愛媛の試験は教育原理に7割が集中する」という実態を体感することだ。
やること:
最初の演習で「時間が足りない」と感じるのは普通のことだ。 そこから「どこを即答レベルに仕上げるか」を逆算していく作業が始まる。
優先順位:
やること:
確実に正解できる問題を増やしながら、本番のペースに慣れる最終フェーズ。
やること:
他の自治体も並行して受ける受験生に多い失敗だ。
教育心理は多くの自治体で出題される分野だが、愛媛県の教職専門ではほぼ出題されない。 ピアジェ・ヴィゴツキー・エリクソンといった人物の理論を深掘りする時間を愛媛対策に使うことは、コストパフォーマンスが低い。
愛媛を第一志望にするなら、教育心理の比重を大幅に下げて教育原理に時間を集中させるという割り切りが必要だ。
本番の試験ペースは、タイマーを使わないと体感できない。
「答えを考えながらゆっくり解いて答え合わせする」という練習方法では、本番のペース感覚がつかめない。 愛媛県の過去問を解く際は必ずタイマーをセットし、所要時間を記録しながら解く。 これを練習初回から徹底することが、愛媛対策で最も重要なルーティンだ。
教職専門の択一対策は暗記ベースで取り組みやすいため、小論文の準備が後回しになりやすい。
しかし愛媛では2次試験で小論文が課され、1次発表(8月7日)から2次(8月18日〜21日)まで11〜14日しかない。 「知識を詰め込んだが文章にできなかった」という事態が、特に書き慣れていない受験生に多く起きる。
教職専門の知識が入ってきたタイミングで「このテーマについて書く練習」を並行して始めると、知識の定着と表現力の習得を同時に進められる。 書く練習は1か月前では遅い。2か月前から少しずつ始めることを強く勧める。
愛媛県の教職専門対策を一言でまとめるなら、「教職100点・専門教科400点、その500点が2次では50点——この配点構造に全てを最適化する」。
全国的な「まんべんなく対策する」アプローチでは、愛媛の試験設計に対応できない。 教育心理は省き、教育原理に集中し、タイマーをセットして即答する練習を繰り返す。 この絞り込みを早期に決断できた人が、愛媛の試験では有利になる。
そして択一試験の対策と並行して、小論文の書く練習も早めに始めること。 「知っている」と「書けて語れる」は別の力だ。
愛媛県の求める教師像——「愛顔(えがお)にあふれ、誠実に子どもと向き合う教師」——を自分の言葉で語れる状態になることが、論作文・面接の深みにつながる。
中四国エリアの他県の傾向が気になる人は、広島県の教職教養対策や岡山県の教職教養対策も参照してほしい。 教職教養の勉強法・完全ガイドでは、全体像を整理してから自治体別対策に入るための基礎知識をまとめている。
教職教養の暗記と並行して、小論文の答案練習も必須です。 論作AIは愛媛県の出題傾向に合わせた採点ができるAIサービス。 書いた答案に対して5つの観点から点数とフィードバックが返ってくるので、「何が足りないか」を一人で勉強していても把握しやすい。
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札幌市教員採用試験の面接対策を元教員視点で解説。個別面接Ⅰ(願書・自分)/Ⅱ(札幌市教育)の性格の違い、頻出質問、「学校教育の重点」で問われるキーワード(まほうのかいわ・さっぽろっ子)まで網羅。特別支援区分再編にも対応。校種別対策も掲載。
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