茨城県は2025年に、全国初の決断をした。
1次試験から「教職専門」を廃止する、という決断だ。
教職教養、つまり教育原理・教育法規・教育心理・教育史といった分野の筆記試験を、1次試験の段階では問わない。 そういう方針に舵を切った。
背景には「筆記試験の壁が受験者の間口を狭めている」という問題意識がある。 民間企業経験者や転職希望者が教職に入りやすい環境をつくるために、筆記による足切りをなくした。 さらに外部試験(SPI3)による選考枠まで新設している。
これは「茨城県の教採は、他県とは違う設計になった」ということを意味する。
これから茨城県の教採を受ける人は、この前提から入らないと対策の方向性がズレる。
茨城県の第一次試験は、以下の構成になっている。
「教職専門」は廃止。 学習指導要領・教育基本法・教育心理などを問う筆記試験は、1次試験からなくなった。
| 項目 | 令和7年度採用まで(旧) | 令和8年度採用から(現行) |
|---|---|---|
| 1次試験 | 教職専門(20問・30分) + 専門教科 | 専門教科のみ |
| 教職専門の配点 | 60点満点(1問3点) | なし |
| SPI3選考 | なし | 200名規模で新設 |
| 1次試験日 | 例年7月 | 5月(全国より早い) |
2024年実施(令和7年度採用)以前に受けた人の情報、あるいは古い参考書や過去問の解説は、この制度変更を反映していない場合がある。 情報の鮮度を必ず確認してから参照してほしい。
2次試験は以下の構成になっている。
1次試験で教職専門がなくなった分、2次試験の面接・模擬授業の比重が実質的に上がっている。 知識を問う場が1次筆記から2次の面接・模擬授業に移ったとも読める。
5月という1次試験の日程は、対策の開始時期に直結する。 「教採は7月が本番」という全国的なイメージで動いていると、試験2ヶ月前でまだ対策を始めていない、という事態になりかねない。 実施要項の日程を最初に確認することが、スタート地点の絶対条件だ。
もう一つ、茨城県独自の仕組みとして押さえておきたいのがSPI3選考枠だ。
一般選考とは別に、外部試験(SPI3)で受験できる枠が設けられている。 採用予定数のうち200名程度という大きな枠で、全校種が対象になっている。
SPI3はテストセンター(リアル会場・オンライン会場)で受験する形式だ。 全国各地で受験できるため、通勤・育児等で茨城県まで出向くのが難しい受験者にも門戸が開かれている。
一般選考を検討している人も、SPI3選考枠の仕組みと対象者要件を実施要項で確認しておくと、自分に合った選択肢が見えてくる。
茨城県教育委員会が教職専門を廃止した理由として公表しているのは、「多様な人材が教職に入りやすい環境をつくる」という方針だ。
教職専門の筆記試験は、現役学生や専業受験生には有利に働く一方、働きながら受験する社会人にとって準備コストが高い。 試験勉強に集中できる時間が限られる中で、教育法規の条文や人物名・理論名を大量に暗記することは、それ自体がハードルになっている側面がある。
茨城県は教職専門の廃止とSPI3選考枠の新設を組み合わせることで、民間経験者・転職希望者の受験を実質的に促進した。 教職専門廃止は全国初の動きとして注目されており、他県にも影響を与える可能性がある変化だ。
ここを誤解すると痛い目を見る。
教職専門は1次筆記からなくなったが、教職の知識そのものは2次試験の面接・模擬授業で問われ続ける。
たとえば面接では、「学習指導要領の改訂で何が変わったか」「生徒指導提要をどう実践に活かすか」「インクルーシブ教育についてどう考えるか」という問いに、自分の言葉で答える力が必要になる。
模擬授業では、授業設計の背景にある教育原理・指導方法の理論的根拠を面接官に問われることがある。 「なぜその流れで授業を設計したのか」「学習指導要領のどの部分と結びつくか」という問いに即座に答えられるかどうかが、評価の分かれ目になる。
筆記試験がなくなっただけで、教職教養の知識を「使える形で持っている」という状態が求められる本質は変わっていない。 むしろ「暗記して書く」から「理解して語る」という形の変化だと捉えた方が正確だ。 知識の保有量を問われた旧来の形より、使いこなす力を問う形に変わったと言ってもいい。
令和7年度採用まで実施されていた「教職専門」(20問・30分・60点)の傾向は、2次試験の面接・模擬授業対策にそのまま使える。
出題頻度が高かった分野は次の通りで、これらは面接でも問われやすいテーマだ。
| 分野 | 傾向 |
|---|---|
| 教育原理(学習指導要領・生徒指導) | 最多出題。改訂のポイントが毎年問われていた |
| 教育法規(教育基本法・学校教育法) | 条文の正確な理解が求められる |
| 教育時事(茨城県施策含む) | 「いばらき教育プラン」絡みの出題が増加傾向 |
| 教育心理(発達・学習理論) | 人物名と理論名の対応が頻出 |
| 教育史(西洋近代中心) | 出題数は少ないが毎年出ていた |
旧・教職専門の傾向を「面接で問われるテーマのリスト」として活用することが、茨城県受験者にとっての合理的な使い方だ。 協同出版の茨城県版過去問には旧・教職専門の問題も収録されているので、面接準備の参考資料として使える。
茨城県教育委員会が策定する「いばらき教育プラン」は、茨城県の教育施策の方向性を示すもので、教採の筆記・面接・論作文で関連テーマが問われてきた。
近年のいばらき教育プランが重点を置いているキーワードは以下の通りだ。
特筆すべきは「アントレプレナーシップ」だ。 全国的な教育施策では見慣れないこのキーワードが、茨城県では明示的に施策に盛り込まれている。 2023年にはIT未来高等学校(全国初の公立IT専科高校)とつくばサイエンス高等学校が開校するなど、具体的な動きが伴っている。
茨城県はつくば市を中心に、国立研究開発法人や大学が集積する「科学技術エリア」を抱えている。 筑波研究学園都市という国家プロジェクトが背景にあり、地域の産業・研究との連携を視野に入れた教育づくりが求められている。
「子どもたちが科学技術や起業精神を身につけて、地域や社会に出ていける」というビジョンが、いばらき教育プランの根底にある。 この文脈を知っておくと、面接や論作文で「茨城の子どもたちに何を育てたいか」という問いに対する答えに具体性が出る。
「グローバル教育」「STEAM」「アントレプレナーシップ」という言葉を並べるだけでなく、「なぜ茨城でこれが求められるか」という文脈と結びつけて話せるかどうかが、面接での深みを分ける。
「いばらき教育プラン」の最新版の概要を一読しておくことは、茨城県受験者にとって他県受験者との差をつけやすいポイントになる。 茨城県教育委員会の公式サイトで閲覧できる。
教職専門廃止後の茨城県を受ける人が「理解しておくべき」テーマを10個まとめた。 試験での正確な暗記ではなく、「自分の言葉で説明できるか」という水準を目標にしてほしい。
資質・能力の三つの柱(知識・技能/思考力・判断力・表現力/学びに向かう力・人間性等)。 主体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラーニング)の具体化。 カリキュラム・マネジメントの意味と実践例。
面接では「あなたの授業でどう実現するか」という問い方で必ず来る。 受験する校種・教科の目標もセットで確認しておく。
三層の支援構造が新設されたことが最大の改訂ポイント。 発達支持的・課題予防的・困難課題対応的の三層が縦軸、時間軸が横軸という構造を理解する。 不登校・いじめ・暴力行為への対応の記述も実務に直結する。 旧来の「問題が起きたら対応する」から「未然防止・日常的支援」へのシフトが改訂の根底にある。
個別最適な学びと協働的な学びの一体的充実。 答申が出た背景(コロナ禍・GIGAスクール構想・多様性への対応)と、現場での実践イメージをセットで持っておく。 茨城県の探究学習・STEAM教育の文脈ともつながる。
第1条(教育の目的)・第2条(教育の目標)・第9条(教員)・第16条(教育行政)。 条文番号と内容の対応を面接で問われることがある。 「暗唱」は不要だが、どの条文に何が書かれているかは即答できる状態にしておく。
こども基本法(2023年施行)の目的とこどもの権利条約との関係。 こども家庭庁の設置(2023年)の意義と、学校教育との連携の視点。 これらの制度変更を「教師としてどう受け止めるか」という視点で整理しておく。
合理的配慮の定義と提供義務。 個別の教育支援計画と個別の指導計画の違い。 通常学級に在籍する発達障害等が疑われる児童生徒の割合(2022年文科省調査で約8.8%)。
茨城県の面接では「通常学級での特別支援の実践をどう考えるか」が問われやすい。 知識として持っているだけでなく、具体的な場面での対応を想定して話せることが評価につながる。
いじめの法律上の定義(主観的・主体的)。 学校いじめ防止基本方針の策定義務。 重大事態(生命・身体・財産に重大な被害)への対応フロー。 いばらき教育プランでも不登校・いじめへの対応強化が明示されているため、茨城県文脈での出題・質問がされやすい。
茨城県固有の文脈として特に押さえておきたいテーマ。 STEAM教育の「A」の広い定義(アート・文化・経済・倫理等)と教科横断の意義。 総合的な学習の時間との接続のさせ方。 「自分の教科とSTEAM教育をどうつなげるか」という問いに答えられる準備が必要だ。
1人1台端末の教育活用の現状と課題。 AIリテラシー・情報モラルをどう教えるか。 「使いこなす力」と「メディアを批判的に読む力」の両面をセットで持っておく。 茨城県はIT未来高等学校の開校など、デジタル教育への投資が具体的に進んでいる。
ピアジェの認知発達段階(感覚運動期・前操作期・具体的操作期・形式的操作期)。 ヴィゴツキーの発達の最近接領域(ZPD)と協働学習の関係。 エリクソンの心理社会的発達(アイデンティティ形成)。 人物名と理論・著作を混同しないよう対応させておく。 面接では「その理論を授業設計にどう活かすか」という問いに転換されることが多い。
茨城県の1次試験は5月実施という早い日程だ。 この事実から逆算することが、計画の出発点になる。
まず茨城県の実施要項を公式サイトでダウンロードして、現在の試験構成を確認する。 制度変更があった年かどうかを確認することが最優先だ。
やること:
この時期に「教職専門廃止後の茨城県で何が問われるか」の全体像をつかんでおくことで、その後の学習が効率よく回る。 6ヶ月あると思って油断しやすいが、5月実施は意外と早い。 年内に計画の骨格を立てておくことを強くすすめる。
1次試験対策の中心は専門教科だ。 専門教科の演習量を確保しながら、並行して面接で必要な教職教養知識を「語れる形」で整理していく。
教職教養の優先順位:
面接準備:
3ヶ月前はまだ「準備中」という感覚になりやすいが、茨城県の場合5月実施なので、3月時点で仕上げを意識した状態でないと間に合いにくい。
1次試験の合否を左右するのは専門教科だ。 ここを崩さないことを最優先にしながら、模擬面接や想定問答の練習を組み込む。
やること:
2次試験(面接・模擬授業)は1次通過後に本格対策に入ることになるが、骨格は3ヶ月前から積み上げておく方が楽になる。 1次試験の前後で完全に気持ちを切り替えられる人は少ない。 2次の準備の種を先に蒔いておく感覚で動く方が、結果的に余裕が生まれる。
全国的に「教採の1次は7月」というイメージが定着しているが、茨城県は5月実施だ。 7月基準でスケジュールを組んでいると、試験2ヶ月前でまだ本格対策に入っていない、という事態が生まれる。
茨城県を受けると決めたら、最初に実施要項の日程欄を確認すること。 そこから逆算してスケジュールを立てることが出発点になる。 「なんとなく他の自治体と同じスケジュール感」で動くと、茨城県では確実に後手を踏む。
制度変更の意味を誤解したまま対策を組むパターンだ。
1次試験の筆記からなくなっただけで、面接・模擬授業では教職の知識と実践力が問われ続ける。 「知識を持っているか」ではなく「知識を使って語れるか」という問われ方に変わっただけで、むしろ要求水準は上がっているとも言える。
専門教科だけ対策して面接で全く語れない状態では、2次試験で大差がつく。 教職教養の学習は「書く準備」から「語る準備」にシフトして継続することが正解だ。
茨城県の教採では、茨城県の教育施策への理解が面接・論作文で差になる。 いばらき教育プランに書かれているグローバル教育・STEAM・アントレプレナーシップというキーワードは、「知らない」では回答の深みが出ない。
暗記は不要だが、内容を読んで「なぜ茨城県がそこに力を入れているか」を自分なりに説明できる状態は必要だ。 つくば研究学園都市という地域の背景と結びつけると、説明の説得力が増す。 他の受験者との差は、この「茨城らしさ」を自分の言葉で語れるかどうかで生まれやすい。
教職専門廃止後の茨城県受験者にとって、参考書の使い方は「暗記して書く」から「読んで理解して話せるようにする」に変わる。 以下の3冊は、その目的に沿った使い方ができる。
茨城県の教採で論作文が課される場合、そして2次試験の面接で自分の考えを論理立てて述べる力が求められる場合、どちらにも共通して必要なのは「教育課題に対して自分の立場と根拠を持って語る力」だ。
「STEAM教育をどう実践するか」「不登校の子どもへの対応をどう考えるか」——こういったテーマに対して、書ける・語れる力は練習なしには伸びない。
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