広島県の教採を受けようとして、まず戸惑うのが「広島県」と「広島市」の関係だと思う。 出願先が2つあるのか、試験が別々なのか、ネットで調べても情報がバラバラで混乱する。
それに加えて、この科目の正式名称が「教職に関する専門教育科目」で、要項が名指しする出題範囲が教育原理と教育法規に絞られているのも広島の特徴だ。 一般教養をガチガチに対策した人が「範囲が違った」と気づいてしまうケースも少なくない。
そしてもう一つ、対策の設計を決める数字がある。この科目の配点は50点で、教科に関する専門教育科目は200点。比率は1:4だ。 教職教養の記事でこう書くのは妙だが、広島県では教職に時間を注ぎすぎないほうがいい。詳しくは次章で扱う。
この記事では、広島県の教職教養について、試験の仕組みから出題傾向・学習スケジュールまでをまとめた。 試験本番まで時間を無駄にしないための地図として使ってほしい。
広島県・広島市の公立学校教員採用試験における教職教養(「教職に関する専門教育科目」)は、以下のような試験構成になっている。
令和9年度の実施要項では、この科目の内容がこう定義されている。
教職に関する専門教育科目 教育原理、教育法規等に関する専門的内容についての筆記試験
出題範囲として要項が名指ししているのは教育原理と教育法規の2つだ。 自然科学・社会科学・人文科学といったいわゆる一般教養は、要項に出てこない。 他府県を受験する場合との対策の違いが出やすい部分なので、最初に把握しておく必要がある。
なお試験時間や解答方式(マークシートか記述か)は、実施要項にも注意事項ページにも記載がない。 「35分」「択一式」といった数字を載せている対策サイトがあるが、少なくとも令和9年度の公式資料からは確認できないので、そのまま鵜呑みにしないでほしい。
ここが広島県の対策設計を決める数字だ。
| 試験項目 | 教諭 | 養護教諭 | 栄養教諭 |
|---|---|---|---|
| 教職に関する専門教育科目 | 50点 | 50点 | 50点 |
| 教科に関する専門教育科目 | 200点 | — | — |
| 養護に関する専門教育科目 | — | 200点 | — |
| 栄養に関する専門教育科目 | — | — | 200点 |
教職50点に対して、教科200点。比率は1:4だ。
つまり広島県の第1次は、教職教養で満点を取っても専門で崩れれば通らない設計になっている。 教職の対策に時間を注ぎすぎるのは、配点構造から見て効率が悪い。専門教科が主戦場だと最初に腹を決めておきたい。
逆に言えば、教職50点は「落とさない」ことが目的の科目だ。教育原理と教育法規という要項が名指しした2分野を確実に取り、それ以上は深追いしない。この割り切りができるかどうかで、限られた学習時間の使い方が変わる。
小学校教諭・特別支援学校小学部の受験者は、教科に関する専門教育科目が全教科対象になる。 そして各教科の配点まで要項に書かれている。
| 教科 | 配点 |
|---|---|
| 国語 | 28点 |
| 算数 | 28点 |
| 社会 | 18点 |
| 理科 | 18点 |
| 生活 | 18点 |
| 音楽 | 18点 |
| 図画工作 | 18点 |
| 家庭 | 18点 |
| 体育 | 18点 |
| 外国語 | 18点 |
国語と算数だけが28点で、他の8教科は一律18点。 合計200点のうち、国語+算数で56点=28%を占める。
10教科を均等に対策するのは時間の使い方として合っていない。国語と算数を厚く、残りは取りこぼしを減らす方針が、配点表から導ける結論だ。
出典: 令和9年度広島県・広島市公立学校教員採用候補者選考試験実施要項(広島県教育委員会)
広島県の教職教養は、大きく3つの分野から構成されている。
学習指導要領は毎年出題される、と考えてよい。 特に総則・各教科の目標、主体的・対話的で深い学びの考え方、カリキュラム・マネジメントは頻出だ。
加えて、教育基本法・学校教育法の理念をもとに「教育の目的とは何か」という問いに繋がる基礎的な出題もある。 教育史(コメニウス、ペスタロッチ、デューイ等)については、複数の対策サイトが「広島では出ない」と記載しているが、学習指導要領の背景となる教育思想の文脈では名前が登場することがある。教育史を丸ごと捨てるのはリスクがあるため、主要な人物と思想の対応だけは確認しておきたい。
難易度は高くないが、出題範囲が広い。
法条文の丸暗記というよりは「この規定はどの法律に書かれているか」「第○条の趣旨は何か」という出題パターンが多い。 まずは教育基本法と学校教育法の主要条文から入り、徐々に関連法令へ広げる順番が効率よい。
文部科学省が近年発表した答申・調査・通知が問われる。 「令和の日本型学校教育」(2021年中教審答申)、不登校・いじめに関する調査結果、GIGAスクール構想の進捗、性的マイノリティへの対応に関する通知など、直近2〜3年の動向は一通りおさえておく必要がある。
教育時事は毎年問題が刷新されるため、参考書だけでは追いつかない部分も出てくる。 文部科学省のウェブサイトで最新の答申・通知を確認する習慣をつけておくと、本番で見たことのない選択肢に動揺しにくくなる。
受験前に必ず整理しておきたいのが、「広島県」と「広島市」の関係だ。
広島市は政令指定都市であり、教員採用に関しても独自の権限を持つ。 ただし実務上、広島県教育委員会と広島市教育委員会は1次試験を共同で実施している。
「広島県・広島市公立学校教員採用候補者選考試験」という名称が示すとおり、筆記試験(教職教養・専門教養)は県・市共通の問題が使われる。 1次試験対策としては、県受験・市受験で別の勉強をする必要はない。
1次試験が共通でも、出願先は「広島県」か「広島市」かのどちらかを選ぶ形になる。 それぞれ別の採用名簿に登録され、配属先(勤務校)も異なる。
どちらの学校で働きたいかを早めに決めたうえで出願先を確定させること。 なお、両方に同時出願することはできない。
2次試験(模擬授業・面接・実技)は、広島県と広島市でそれぞれ独自に実施される。 面接で問われる内容も異なる部分があり、特に「平和教育」の比重は広島市の方が明確に大きい。
広島市が公表している「求める教職員像」には、平和を希求する心や、互いの違いや多様性を理解・尊重し共生・協働する力が明示されている。 広島市を受験する場合、2次試験の面接・小論文では平和教育に関する自分の考えを具体的に語れるよう準備する必要がある。
過去問の傾向と、広島県・広島市の教育施策を踏まえた頻出テーマを整理する。
「主体的・対話的で深い学び」の定義と授業改善の方向性は毎年問われる。 「見方・考え方」「資質・能力の三つの柱」との関係性を整理して理解しておきたい。
第1条(教育の目的)・第2条(教育の目標)は最頻出。 法文を読んでいない人が「なんとなく」で答えると引っかかる選択肢が多い。 条文そのものを声に出して読む時間を確保してほしい。
いじめの定義・学校の設置義務・重大事態の対応などが出る。 「いじめかどうかは主観的な感受性を踏まえて判断する」という条文の表現は択一で問われやすい。
通常学級における合理的配慮、個別の教育支援計画・個別の指導計画の違い、インクルーシブ教育の考え方。 近年、通常学級に在籍する発達障害のある子どもへの対応が充実してきており、出題頻度も上がっている。
2021年の中教審答申「『令和の日本型学校教育』の構築を目指して」は、現在の教育政策の出発点になる文書だ。 「一人一人の子供を主語にする学校教育」というキーワードを中心に、個別最適な学びと協働的な学びの一体的充実というフレームをおさえておく。
1人1台端末の整備を経て、今は「どう活用するか」の段階に移っている。 情報活用能力が学習の基盤として位置づけられていること、デジタル教科書の動向、AI活用の方向性なども視野に入れておく。
不登校の定義(年間30日以上の欠席)と、教育機会確保法の基本理念は必須知識。 フリースクール・学習センターへの出席認定の考え方も確認しておく。
2022年に成立した「こども基本法」が近年の時事問題として出やすい。 子どもの意見表明権・最善の利益という概念は、子どもの権利条約と合わせて整理する。
2022年の教育公務員特例法改正による「研修履歴の記録・活用」の仕組みは比較的新しい制度変更で、教採でも問われ始めている。 研修体制の整備や教師の個別最適な学びの促進という方向性を把握しておく。
広島県の教育施策を問う問題の出どころが「広島県 教育に関する大綱」だ。 令和8(2026)年7月に知事が新しい大綱を策定したため、ここで覚える内容が入れ替わっている。
| 旧大綱 | 新大綱 | |
|---|---|---|
| 計画期間 | 令和3〜7年度 | 令和8(2026)年度〜令和12(2030)年度の5年間 |
| 基本理念 | 「広島で学んで良かったと思える、広島で学んでみたいと思われる、日本一の教育県の実現」 | 「広島ならではの学びを通じて、一人一人の個性や能力を見いだし、伸ばし、生きる力を育む」 |
新大綱は基本理念に加えて「目指す姿」を掲げている。
一人一人が、生涯にわたって主体的に学び続け、多様な人々と協働して新たな価値を創造する人づくりの実現
古い参考書や対策サイトは旧大綱の「日本一の教育県の実現」を載せたままのことがある。受験するのは新大綱の期間なので、必ず新しいほうで覚えてほしい。
広島県が全国に先駆けて取り組んできた「学びの変革」は新大綱にも引き継がれ、「学びの変革の推進」として(1)質の高い、深い学びの実現(2)学校・家庭・地域が連携・協働した教育の推進、という形で整理されている。
面接で「広島県を志望する理由」を語るなら、この「学びの変革」に触れられると県の文脈を理解していることが伝わる。
出典: 広島県 教育に関する大綱(広島県)
広島市受験者はこれに加えて、平和教育に関する理解を深めておく必要がある。 広島市教育委員会は「平和教育プログラム」を策定・実施しており、すべての市立学校で体系的な平和教育が行われていることを公式に明示している。 このプログラムは、被爆体験や「ヒロシマ」の歴史を次世代に継承することを目的として構成されており、単なる歴史の授業ではなく「平和を実現する力を育む」教育として位置づけられている。
広島市の公式資料では、平和教育の目標として「戦争の悲惨さや平和の尊さを理解し、平和を希求し実現しようとする態度の育成」が掲げられている。 教員として採用されれば、この平和教育の担い手になることが期待される。 面接や小論文で「平和教育にどう向き合うか」を問われたときに、「広島市の平和教育プログラムの存在を知っていること」と「自分が実際に授業でどう取り扱うか」の2つを答えられるかどうかが、準備の有無をはっきりと分ける。
具体的には「被爆体験の証言を授業でどう扱うか」「平和について子どもたちが自分の言葉で考える場をどうつくるか」という問いに対して、自分なりの答えを事前に整理しておく作業が必要だ。 「大切なことだと思います」という抽象的な答えにとどまらず、学年や教科との接続まで具体化できる状態を目指してほしい。
試験は毎年7月に1次試験が実施される。 逆算した3段階の目安を示す。
まず過去問を1〜2年分解いて「今の実力」を確認する。 解けない問題がどの分野に集中しているかを把握したうえで、参考書でインプットを始める。
この時期に優先したいのは、教育基本法・学校教育法・学習指導要領の総則。 分量が多く感じるが、頻出部分は限られている。過去問の解答解説と照らし合わせながら読むと、覚えるべき箇所が絞り込みやすい。
具体的な学習行動としては、以下の順番がスムーズだ。
まず教育基本法を1条から通しで読み、第1条・第2条・第4条・第9条に絞って条文を口に出して読む習慣をつける。 声に出すと、後から「あの表現、確か第2条だったな」という記憶の引き出し方ができるようになる。
次に、学習指導要領の総則を開いて「主体的・対話的で深い学び」と「カリキュラム・マネジメント」の定義部分を読む。 参考書でまとめられた要約だけを読むと、択一の選択肢で微妙な言い回しに引っかかりやすい。 一次資料に触れておくことで、選択肢の誤りに気づく感覚がつきやすくなる。
この時期はまだ「覚える」より「慣れる」フェーズ。 1日30分でも継続できる習慣をつくることが最優先だ。
この時期から過去問を年度ごとに本番形式で解く練習を始める。 試験時間は公式に公表されていないため、過去問を解くときに自分で計測して感覚をつかんでおくといい。
あわせて意識したいのが配点だ。教職50点に対して教科200点なので、演習量の配分も1:4に近づける。教職の過去問を何周もするより、専門教科に時間を回すほうが総得点は伸びる。 予備校の予想問題だけに頼らず、公式過去問から出題パターンを自分でつかむのが最も確実な対策になる。
教育時事については、文部科学省のウェブサイト(「最近の文科省の動向」など)を月1回程度チェックする習慣をつけるとよい。
過去問を解いたあとは、単に正誤を確認するだけでなく「なぜ正解か」「なぜ間違いか」の根拠を参考書や条文で確認する作業が大事だ。 この確認作業を省くと、同じ形式の問題で再び間違える。 解いた問題数より、1問ずつ根拠まで確認した問題数の方が本番の得点に直結する。
また、この時期に弱点分野の傾向が見えてくる。 「法規は取れるが時事が弱い」「学習指導要領は読んだが教育史系で迷う」など、自分の穴がはっきりしてくるので、残りの期間に優先して補強するリストをノートにまとめておく。
法条文の最終確認と、頻出テーマのまとめ。 「この問題が出たらすぐ答えられる」という状態の問題を増やすことに集中する。
直前期にやりがちな失敗が「新しい参考書に手を出すこと」だ。 この時期は新しいインプットより、これまでの学習で「なんとなくしか分かっていない」箇所をつぶす方に時間を使う。 ノートの弱点リストを見直して、1問ずつ確認していく作業が最もコスパが高い。
広島市受験者は、平和教育に関する自分の考えを文章化しておく作業をこの時期にやっておく。 面接での問いに対して「とっさに出てこない」という事態を防ぐための準備だ。 「広島市が平和教育プログラムを実施していることを知っていますか」という問いに即答できるよう、広島市教育委員会の公式ウェブサイトで平和教育の取り組みを事前に確認しておくことも忘れずに。
教職教養(筆記)の対策に集中しすぎてしまうと、2次試験で逆転されやすい。
広島県・広島市の2次試験には模擬授業・個人面接が含まれており、最終合否は「一定の基準に達しない試験項目がある場合は採用候補者名簿に登載されない」という仕組みになっている。 つまり筆記でどれだけ高得点でも、面接や模擬授業が一定水準に届かないと合格できない可能性がある。
小論文(広島県・広島市では受験区分によって課される)は、教育課題に対して自分の考えを具体的に述べる問題が多い。 「主体的な学び」「特別支援」「いじめ対応」「平和教育」など、教職教養で知識として入れた内容を、今度は自分の言葉で表現する練習が必要になる。
知識の暗記と記述・表現の練習は、別の学習だ。 教職教養の勉強が進んできたら、並行して小論文の答案を書く時間をスケジュールに組み込んでほしい。
「書く練習」をどこから始めればいいか分からない、という人が多い。 取っかかりとしては、まず「800字で書く」というハードルを下げることだ。
教職教養で学んだテーマ——たとえば「いじめ防止」「特別支援教育における合理的配慮」「不登校の子どもへの対応」——をひとつ選んで、自分ならどう考えるかを800字でまとめてみる。 知識のインプットを終えた直後にやると、「覚えた内容を文章にする」練習になるので一石二鳥だ。
広島市受験者は、平和教育をテーマとした答案練習は特に早めに取り組んでほしい。 「平和教育を授業でどう実践するか」「被爆体験をどう子どもたちに伝えるか」は、抽象的な感想文にならないようにするのが難しいテーマだ。 一度書いてみると「自分はこの問いに対してまだ答えを持っていない」という発見がある。 その発見が早ければ早いほど、準備する時間が確保できる。
答案を書いたら、採点基準の観点(課題の把握・論理展開・具体的な方策・文章表現)で自己チェックする習慣をつけると、書くたびに何が足りないかが見えてくる。
Q. 広島県と広島市、どちらに出願すればよいですか?
どちらの市区町村で働きたいかによって決まる。 「広島市内の学校で働きたい」なら広島市、「その他の市町村でもOK」なら広島県への出願になる。 1次試験の勉強内容は共通なので、迷っているなら先に学習を進めながら出願先を検討する時間を作ればよい。
Q. 教育心理は出題されないのですか?
複数の情報源で「広島県は教育心理・教育史の出題がない」と記載されている。 ただし、学習指導要領の記述の中に発達心理的な考え方が含まれることはある。 「教育心理学の理論問題としては出ない」という理解が適切だと思う。
Q. 過去問はどこで入手できますか?
広島県教育委員会と広島市教育委員会の公式ウェブサイトで、直近年度の試験問題と採点基準(解答・配点)がPDFで公開されている。 無料で入手できるので、まずそこから複数年分をダウンロードして取り組むのが基本だ。
Q. 広島県の教育施策はどこで確認できますか?
広島県教育委員会ウェブサイト(施策の概要・大綱)で確認できる。 「広島県 教育に関する大綱」の本文PDFが公開されている。令和8年7月に新しい大綱(令和8〜12年度)へ改訂されたので、必ず新しいほうを確認すること。
広島県の教職教養対策でおさえておくべきことを整理する。
知識を詰め込むことに追われて、書く練習が後回しになる受験生は多い。 でも教採の現場では「知っている」と「書けて語れる」の差がそのまま合否に直結する。 試験まで残り時間がどのくらいあるかを意識しながら、学習の配分を決めてほしい。
教職教養の暗記と並行して、小論文の答案練習も必須です。 論作AIは広島県の出題傾向に合わせた採点ができるAIサービス。 書いた答案に対して5つの観点から点数とフィードバックが返ってくるので、「何が足りないか」を一人で勉強していても把握しやすい。
三重県教員採用試験の教職教養を元教員が解説。人権教育・特別支援・外国にルーツのある子への教育など三重独自の出題傾向と、教育原理・法規・心理・時事のバランス型対策を網羅。
長野県教員採用試験の教職教養を元教員が解説。2026年度(令和8年度)から一般教養廃止・専門教科と一体化という大きな変更があった。出題傾向・頻出テーマ・学習スケジュールを網羅。
栃木県教員採用試験の教職教養を選考要項ベースで解説。正式名称は「一般教養(教職専門を含む)」で教職教養は独立科目ではない。試験時間50分、不合格者への得点開示制度、とちぎ教育ビジョン(2026-2030)まで元教員が整理。
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