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1次試験が終わった瞬間、「次は模擬授業か……」と頭を抱える受験生は少なくない。
小論文は書いて練習できる。 面接は想定問答を作れる。 でも模擬授業だけは、何をどう準備すればいいのかが見えにくい。
「授業なんて、一度もやったことがないのに」 「本番で子どもの代わりに面接官を相手に授業するって、どういうこと?」 「時間が余ったらどうする? 足りなかったら?」
こういう不安が積み重なって、2次対策のなかで模擬授業だけ後回しにしてしまう——そういうパターンが一番危ない。
元小学校教員として現場で働いていたとき、授業づくりに一番悩んだのは最初の数ヶ月だった。 何が評価されているのか、何が「いい授業」なのかを理解するまでに時間がかかった。 試験の模擬授業も、同じ構図だと思う。 「評価の軸」がわかれば、準備の方向が定まる。
この記事では、その「評価の軸」から当日の動き、練習方法まで一気に整理する。 2026年度の増強版として、校種別(小学校/中学校/高校/特別支援)の攻略ポイント・教科別指導案の発問例・採点者視点の挽回リアル事例も新たに追加している。ここにしかない情報も多いので、受験校種に合わせて読み込んでほしい。
模擬授業とは、教員採用試験の2次試験で課される実技形式の試験だ。 受験者が「教員」として、面接官(や他の受験者)を「児童・生徒」に見立てて、実際に授業の一部を行う。
時間は自治体によってさまざまだが、5〜15分程度が最も多い。 導入部分だけを見せる自治体もあれば、展開まで含めた20分近い形式の自治体もある。
試験の前に「お題(学年・教科・単元)」が渡される場合と、事前に複数の候補が提示されて当日直前に決まる場合がある。 自治体によっては、試験当日に会場で初めてお題が渡され、20〜30分で準備してから実施というパターンもある。
小論文や面接が「言葉で考えを伝える」試験だとすると、模擬授業は「実際に動いて見せる」試験だ。 採用側からすれば、「この人は本当に授業ができるか?」を最も直接的に確認できる機会でもある。
だから、1次試験合格後の2次対策で、模擬授業を最後回しにするのは得策ではない。 むしろ、最も練習量が成果に直結する試験科目だと考えてほしい。
模擬授業の評価は、「面白い授業かどうか」ではない。 採用側が見ているのは、教員としての基本的な指導力と姿勢だ。
主な評価観点は以下の5つに整理できる。
与えられた単元・教材に対して、受験者がどれだけ理解を深めているかが出発点だ。
「何を教えるか」だけでなく、「なぜこれを教えるか」「この単元のどこが子どもにとって難しいか」を把握しているかどうかが問われる。 指導案に書いた内容と、実際に話す内容が噛み合っているかどうかも、ここで見える。
教材研究が浅いと、発問が表面的になる。 「○○はどんな気持ちでしたか?」「どう思いますか?」という問いかけだけを繰り返す授業は、教材への理解が追いついていないサインとして受け取られる。
最初の1〜2分で、子どもの「知りたい」「考えてみたい」という気持ちを引き出せるかどうかが問われる。
教科書の最初の一文をそのまま読み始めるだけでは弱い。 「今日の授業で一番大事な問い」が見えてくる導入になっているか、子どもが自然に授業の世界に引き込まれるような仕掛けがあるかどうかを見られている。
導入の工夫は、模擬授業のなかでも特に差が出る部分だ。 「前の授業で習ったことと今日の授業のつながり」を示す振り返り型の導入や、具体的な問いかけ・体験から入る体験型導入など、複数のパターンを練習しておくといい。
授業の核は、発問だ。
「○○を調べてください」「答えは何ですか」という指示型・確認型の問いばかりだと、子どもの思考は深まらない。 「なぜだろう?」「○○と○○は何が違う?」「もし○○だったらどうなる?」という思考を引き出す発問を、意図的に設計できているかどうかが評価される。
発問が「独白」になるパターンも要注意だ。 「皆さんはどう思いますか? ……そうですよね、実は○○なんですよ」と、答えを自分で言ってしまう受験者が多い。 子どもが考える時間・空白を意図的に作れるかどうかが、本物の発問力の指標になる。
試験会場では、ホワイトボードを使う場合がほとんどだ。
板書が評価される観点は、「きれいかどうか」よりも「構造が見えるかどうか」だ。 授業の流れ(めあて→問い→まとめ)が黒板上で可視化されているか。 文字が追えるサイズか。 子どもの発言を板書に生かす「発言の可視化」ができているか。
短い時間の模擬授業でも、「めあて」を最初に書いて、最後に「まとめ」と対応させるだけで板書の構造は格段に見えやすくなる。 このひと手間を省かないようにする。
面接官が「生徒役」として発言・リアクションをすることがある。 そこに対して、受験者がどう反応するかを見られている。
想定外の発言を無視する、頭ごなしに否定する、うまい返し方ができずに固まる——こういった反応が出ると評価は下がる。 逆に、生徒役の発言を拾って「面白い視点だね」と授業に組み込む、別の子に「どう思う?」とつなぐといった対応ができると、評価は上がる。
これは対話力であり、本番の現場でも毎時間問われることだ。
当日のイメージが具体的にあるほど、本番で焦らずに動ける。 標準的な流れを整理する。
入室前(控え室) お題が渡されるタイミングは自治体によって異なる。 控え室で学習指導案を完成させる時間がある場合は、落ち着いて作業する。 深呼吸して、「自分が今日一番伝えたいことは何か」を確認する。
入室〜開始前 試験官に挨拶をして、指示に従って立ち位置や板書の確認をする。 「いつでも始めてください」と言われたら、すぐに開始する。 「授業を始めます」「○年○組、○○の時間を始めます」など、場を整えるひと言を冒頭に入れると場の雰囲気が作りやすい。
授業中(5〜15分)
時間管理は自分でする。 腕時計を持参して、手元で確認しながら進める。 「残り1分」のサインを出す自治体もあるが、出ない場合も多い。
退室 「以上で授業を終わります」と宣言して区切る。 その後、質疑応答が入る自治体もある。 「どうしてこの発問を選びましたか?」「もし子どもから予想外の発言が出たらどう対応しますか?」といった授業の意図を問う質問が多い。 落ち着いて、授業の意図を自分の言葉で答えればいい。
1次試験の合格発表から2次試験まで、期間は1〜2ヶ月程度の自治体が多い。 この期間を逆算して動く。
2次試験まで6〜8週間前(合格発表直後)
まず自分が受験する自治体の2次試験要項を精読する。 「模擬授業の時間は何分か」「事前に教科・単元は知らされるか」「指導案の提出はあるか」「ICT機器は使えるか」——これらを確認せずに練習を始めると、方向がズレる。
確認できたら、教科・単元の絞り込みをする。 「得意な教科で勝負する」か、「自治体が頻出しやすい教科を選ぶ」かは受験者の判断だが、どちらにしても1〜3単元に絞って深く準備する方が、広く浅くやるより効果が出やすい。
2次試験まで4〜5週間前
選んだ単元の学習指導案を書き始める。 教科書・指導書を読み込んで、「この単元の山場はどこか」「子どもがつまずきやすいのはどこか」を把握する。 板書計画も同時に作る。
並行して、一人で声に出す練習を始める。 最初は頭の中でシミュレーションするだけでなく、実際に立って話す。 話してみると、「頭では分かっているのに言葉が出ない」「発問が漠然としている」という課題が見えてくる。
2次試験まで2〜3週間前
他の人に見てもらいながら練習する時期だ。 友人・家族・自治体の予備校など、誰かに「生徒役」になってもらい、実際のシミュレーションを重ねる。 「わかりにくかったところはどこか?」「板書は追えたか?」という具体的なフィードバックをもらう。
同時に、質疑応答の練習も始める。 「この授業でなぜこの発問にしたか」「子どもが発言しなかったらどうするか」といった想定問答を作っておく。
2次試験まで1週間前
新しいことを仕込む時期ではない。 これまで練習した内容をもう一度通して確認し、時間感覚を身体に馴染ませる。 指導案の最終調整と、当日の持ち物・会場へのルート確認をして、「準備は終わった」という状態で試験当日を迎える。
模擬授業の試験では、当日または事前に学習指導案を提出する自治体が多い。 指導案は、試験官が授業を見る「地図」になる。
単元名・本時の目標 「〜することができる」という行動目標の形で書く。 曖昧な目標(「○○についての理解を深める」)よりも、具体的な行動が見える目標の方が評価されやすい。
本時の展開(3段構成) 導入・展開・まとめの3段階で、各パートの「教師の発問・指示」と「予想される子どもの反応」を対にして書く。 「子どもの反応」の欄が空白だったり、「なんでもいい」的な記述になっていると、教材研究が浅いと見なされる。 子どもがつまずきやすいポイントを予め想定して書いておくことが大切だ。
評価 「何をもってこの授業の目標が達成されたとみなすか」を書く。 観察・発言・ノートなど、具体的な評価の手段を明記する。
罠① 目標と発問がつながっていない 本時の目標には「比較して考える」と書いているのに、発問には比較を促す問いが一つもない——というパターンがある。 指導案を書き終えたら、目標→発問→まとめが一本の線でつながっているかを確認する。
罠② 板書計画が後回し 指導案と板書計画はセットだ。 どのタイミングでどの言葉を板書するか、子どもの発言をどこに位置づけるかを書かないと、本番で板書が迷子になる。
罠③ 時間配分が甘い 指導案の展開欄に「5分」「7分」と書いても、実際に話してみると全然違う時間になることが多い。 必ず声に出してタイムキープしながら確認する。
声を出さずに頭の中でシミュレーションする、は練習のうちに入らない。 必ず立って、声に出して、板書もしながら練習する。 スマートフォンで動画撮影して自分で見返すと、「思っていたより声が小さい」「板書中に子ども(カメラ)への背中が長すぎる」などの気づきが一気に出てくる。 自撮り練習は、フィードバックをもらう前の自己確認として最も効率がいい。
受験仲間がいるなら、お互いに授業を見せ合う練習が最も効果的だ。 「生徒役」として反応することで、発問が機能しているかどうかが自然に分かる。 フィードバックをもらう際は「よかった点」と「改善点」を必ず両方もらう習慣を作る。
地域によっては、教採対策の勉強会が大学や地域で開かれている場合もある。 同じ自治体を受験するメンバーと練習できれば、情報共有という面でも有益だ。
費用はかかるが、経験豊富な指導者に見てもらえるのは大きなメリットだ。 「自分の授業の何が弱いか」を客観的に指摘してもらえる機会は、独学では作りにくい。
ただし、予備校で習った「型」に依存しすぎると、授業が紋切り型になりやすい。 教わった骨格を自分の言葉に翻訳することが大切だ。
練習を録画したら、以下の観点で確認する。
最もよくある失敗だ。 練習では時間内に収まっていたのに、本番では緊張して話すスピードが変わり、時間がずれる。
対策: 展開の各パートに「最低ここまで」「ここが理想」「ここまでできれば完璧」という3段階のゴールを設定しておく。 「まとめ」を最後に削ることは絶対にしない。 どんな状況でも「めあて」に対する「まとめ」は言う、という鉄則を守る。
試験会場は思ったより広い場合もある。 普段の会話の声量で話すと、面接官に届かない。
対策: 練習から「教室の後ろの子に届ける」意識で発声する。 鼻声・のど声になっていないか、録画で確認する。 本番の数日前から喉のケアをしておく。
「○○についてどう思いますか? ……では、実は○○なんですよ」という流れは、子どもが考える隙間がない。
対策: 発問したら3〜5秒は待つ。 「ちょっと考えてみて」「隣の人と相談してみよう」などの指示で「考える時間」を意図的に作る。 「子どもの答えを引き出して、そこから授業を展開する」という構造を指導案の段階で設計する。
何を書くか迷って止まる、書くべきことがなくて立ち尽くす、という状態になる受験者がいる。
対策: 板書計画を事前に紙に書いておく。 「ここまで来たら板書する」という判断を、指導案の段階で全部決めてしまう。 本番では迷わず実行するだけにする。
面接官が無表情で反応しない、あるいは突然「なぜそうするんですか?」と割り込んでくるケースがある。
対策: リアクションがないのは普通だと最初から想定しておく。 面接官が「生徒役」として発言したときは、まず「いいところに気がついたね」「面白い考えだね」と一度受け止めてから対応する。 予期しない発言に対して、「みんなはどう思う?」と他の子(他の面接官)に振るのも有効な手法だ。
話し方が単調、板書だけしてほとんど子どもを見ない、棒読みになる——という状態では、どれだけ内容が良くても印象が下がる。
対策: 授業の最初と最後で、子どもの目を見て話す場面を意識的に作る。 板書をしながら話す練習も重ねる。 「子どもに伝えたい」という気持ちを前面に出す——これは技術ではなく姿勢の問題でもある。
完璧な模擬授業は、誰もできない。 採点者側にいた経験から正直に言うと、「ミスがゼロだった受験者」を見たことはほとんどない。 板書を間違える、発問がすべった、時間が余った——それ自体は致命傷ではない。 問題になるのは、ミスをした後の対応だ。 「崩れたまま立て直せない人」と「ミスを起点に授業を動かした人」——評価が分かれるのはここだ。
エピソード: 漢字を1文字間違えてホワイトボードに書いてしまった。 気づいた瞬間、受験者は消しながらこう言った。 「あ、間違えました。○○と書くのが正しいですね。こういうときは先生が気づいてすぐ直すのが大事——みんなも字を確認してみてね」と、自分のミスを教材にした。
ポイント
エピソード: 面接官が「生徒役」として「先生、○○の場合はどうなるんですか?」と予想外の質問を投げてきた。 答えがすぐに出なかった受験者は、「いい質問だね。先生もちょっと考えたい。みんなはどう思う?」と全体に返した。 短い沈黙の後、「○○じゃないかな」という別の面接官の発言を拾い、「そうだね、○○という考え方がヒントになりそう。次の授業でもう少し深めてみよう」とまとめた。
ポイント
エピソード: 展開部分で発問への反応が思ったより多く、気づいたら残り1分でまとめにたどり着いていなかった。 受験者は「よし、今日のポイントを一言で言えるかな? ○○さん」と特定の面接官に問いかけ、その答えを板書しながら「まさにそれがこの授業の核心だね」と30秒で締めた。
ポイント
エピソード: タブレットで資料を映す予定が、接続エラーで画面が出ない。 受験者は10秒ほど操作したのち、「機械の調子が悪いので、今日は板書で進めます」と宣言してホワイトボードに切り替えた。 想定していた資料の代わりに、数字だけを黒板に書いて説明した。
ポイント
エピソード: 面接官の一人が隣の人と小声で話し始めた。 受験者は授業を止めずに近づき、「今話してくれてたこと、みんなに聞かせてもらえる?」と声をかけた。 特に返答がなかったが、受験者は「一度全体で確認しよう」と発問を挟んで授業の焦点を引き戻した。
ポイント
採点者が本当に見ているのは、完璧さではなく「現場で動ける柔軟性」だ。 ミスをしたとき、想定外のことが起きたとき——そこでどう動くかに、その人の教師としての地力が出る。 挽回できた受験者に共通しているのは、「止まらなかった」という一点に尽きる。
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模擬授業の形式は、自治体によってかなり差がある。 自分が受験する自治体の形式を最初に確認することが最重要だ。
5〜10分型(東京都・大阪府など) 短い分、導入から展開の入り口まで見せることが中心になる。 「いかに短い時間で場を作り、子どもを引き込むか」が問われる。 まとめまで到達できない場合も多いため、「この授業の方向性」が伝わることに集中する。
15〜20分型(地方自治体に多い) ある程度の授業の流れを見せられる。 導入・展開・まとめの3段構成を意識した授業設計が求められる。
当日お題渡し型(準備時間20〜30分) 事前準備ではなく、その場での対応力を見る形式だ。 この形式の自治体を受験する場合、「どんな単元・教科が来ても一定の授業ができる」という汎用的な準備が必要になる。
試験の1〜2週間前に「この教科・単元の範囲から出題する」という案内がくる自治体もある。 この場合、指導案を複数パターン準備して、直前に選べる状態にしておく。
大都市圏を中心に、タブレット端末やプロジェクターを使った模擬授業を認める(あるいは使用を促す)自治体が増えている。 ただし「使えるが使わなくてもいい」という自治体がほとんどなので、ICTを使うことが目的にならないよう注意する。 「なぜこの場面でICTを使うのか」という意図が説明できない使い方は、評価を下げることがある。
東京都: 6分間の模擬授業+口頭試問という形式が特徴的。 模擬授業の後に「なぜこの発問にしたか」「児童が躓いた場合はどう対応するか」という質疑応答があるため、授業の意図を言語化する練習が必要だ。
愛知県: 模擬授業に続けて場面指導も実施するケースがある。 時間配分と精神的な集中が求められる。
神奈川県: 面接の中で模擬授業的な要素が組み込まれる形式もあり、独立した時間が設けられない場合もある。 受験年度の最新の試験要項を必ず確認する。
自治体別の細かい形式は毎年変わる可能性があるため、必ず最新の受験案内で確認してほしい。
校種が違えば、模擬授業はほとんど別の試験だと思っていい。 「子ども役」の年齢層が変わると、求められる声のトーン・発問の抽象度・場の動かし方が全部変わる。 採点者が何を見ているかも校種ごとにズレる。
小学校の模擬授業で一番差が出るのは、低学年と高学年を意識して使い分けられるかだ。
低学年(1〜3年生想定)の場合 声は大きく、ゆっくり、短い文で話す。 指示は1回に1つ。 「今から教科書の○ページを開きます」「開けたら先生を見ます」という2段階の指示でも、できない子が出ることを想定して動く。 視覚教材(絵・写真・実物)があると一気に引き込みやすい。 「なんで?」と声に出せる雰囲気を最初の1分で作ることが、この年齢の導入の肝だ。
高学年(4〜6年生想定)の場合 思考を促す問いかけが中心になる。 「なぜそう思う?」「理由を言える人?」という発問に対して、ペアやグループで考えを整理してから発表する形式も機能する。 板書に子どもの発言を書き取りながら「こういう考えも出たね」と価値づける場面を入れると、対話型の授業として評価されやすい。
採点者は、受験者が「今、何年生の子どもの前に立っているか」を体で分かっているかを見ている。 学年の想定がブレると、発問・言葉選び・テンポすべてがチグハグになる。
中学校では、教科専門性と、生徒の現実とのつながりを同時に見せることが求められる。
1分間の導入で「なぜこの教材を今日やるのか」を語れるかどうかが、まず問われる。 「教科書に載っているから」では弱い。 「社会のこの場面とつながるから」「この単元の前後のどこに位置するか」という文脈を持っていると、教材研究の深さとして採点者に伝わる。
言葉選びも重要だ。 小学生相手の言葉で中学生に話しかけると、一瞬で場が冷める。 「中学2年生が使いそうな語彙」「中学生が反応する問い方」を意識して指導案を作り込む必要がある。
また、生徒指導的な側面も見られることがある。 生徒役が反応しない、ざわつく——そのときに「叱る」のではなく「引き込む」動きができるかが、生徒指導観として評価に入る。
高校では、教科の本質に踏み込む発問設計が問われる。
「知識を確認する問い」だけでは高校生には浅すぎると採点者は見る。 「この定理は、どんな場面で使えると思う?」「この小説の登場人物は、現代のどんな場面と重なる?」という、教科の論理を現実と接続する問いが求められる。
進路や受験との接続が自然に出てくると、高校の現場を理解していることが伝わる。 ただし「受験に出るから」という文脈だけで授業を動かすのは、探究的な学びとは逆方向なので注意する。
高校の採点者は大学教員的な授業観を持っていることもある。 「教える」より「考えさせる」ことへの比重を高めた授業構成を意識する。
特別支援学校の模擬授業は、他の校種と最も異なる。 採点者が見るのは、個別の指導計画(個別最適化)の視点と、支援の意図を説明できるかだ。
「この子には、この活動でこの目標を達成してもらう」という個別の見立てが、授業の動き方に表れているかどうかを見られる。 学習の内容よりも「その子の実態に合わせて何を選んだか」という判断の根拠が問われる。
自立活動の視点も外せない。 「コミュニケーション」「人間関係の形成」「心理的な安定」など、自立活動の6区分を意識した授業の設計を一言で語れると、専門性の高さとして評価に直結する。
口頭試問では「他の職員や保護者とどう連携するか」という問いが出ることもある。 チームで子どもを支えるという発想が自然に出てくるかどうかも見られている。
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校種別が「子どもの年齢・発達の文脈」を作るものだとすれば、教科別は「学習内容の文脈」を作るものだ。 どの教科で授業するかによって、発問の設計が根本から変わる。 「思考を引き出す問い」の形は教科ごとに違う——ここを理解しているかどうかが、指導案の密度に出る。
国語の授業設計で最初に決めるのは、「説明文か、文学か」だ。 この2つは読む目的が根本から違う。 説明文は「筆者が何を主張しているか」という情報処理の授業であり、文学は「登場人物の心情がどう変化するか」という解釈と表現の授業だ。 発問の型もここで変わる。
指導案のポイント 説明文なら、段落ごとに「筆者の主張はどこに書いてある?」という本文根拠を引き出す構造を作る。 文学なら、「このとき主人公はどう感じていたか、本文のどこからそう読んだか」という根拠ベースの発問を中心に据える。 どちらも共通しているのは、「感想を聞く」ではなく「本文から読み取る」という姿勢だ。
発問例
失敗あるある 「正解は1つ」と思い込んで、児童役の答えを「それは違います」と否定してしまうパターンが多い。 国語の読みは一つではない。 立て直しは、「その読み方も本文のここから引き出せるね」と根拠ベースで受け止めることだ。 「どこからそう読んだか」と聞き返すだけで、授業がまた動き始める。
発問を考えるとき、自分がまずその問いに答えてみることを習慣にしてほしい。 答えが薄かったり、すぐに出てこなかったりする問いは、まだ磨き足りない発問だ。
算数・数学の授業で一番陥りやすいのは、「正解が出たところで終わり」になることだ。 答えを確認して先へ進む授業は、教材研究が浅い受験者によく見られる。 採点者は「なぜその解き方になるのか」「別の方法はないか」を子どもに考えさせる場面があるかどうかを見ている。
指導案のポイント 本時の山場を「答えを出す場面」ではなく「考え方を比べる場面」に置く。 「○○さんの解き方と△△さんの解き方、どこが同じでどこが違うか」という比較の発問が、算数・数学の思考型授業の核だ。 板書に複数の解き方を並べることで、子どもが自然に比較できる環境を作る。
発問例
失敗あるある 「正解した子の答えだけ拾って先に進める」のは、授業として最ももったいない動き方だ。 むしろ間違いや別解を取り上げて「この考え方はどこまで合ってる?」と全体で検討する場面を作ることで、思考が深まる。 間違いを「授業のリソース」として使う発想が、算数・数学の授業の質を大きく変える。
発問が「答え確認」になっていないか、指導案を書いたあとに一度声に出して通してみることを勧める。 思考が動く問いかどうかは、実際に口に出してみると分かる。
理科の授業設計で採点者が特に注目するのは、「予想する場面があるか」だ。 観察や実験を「ただやる」だけの授業は、理科の学びの構造を理解していないサインとして見られる。 「予想→実験→検証→気づき」という一連の流れを、模擬授業の時間内に見せることが求められる。
指導案のポイント 導入で「今日の問い」を立てたら、実験や観察に入る前に必ず予想を取る。 「なぜそう思う?」という理由も一緒に聞くことで、観察後の「予想と違った理由」の考察につながる。 まとめでは「今日の実験で分かったこと」を言語化する場面を必ず入れる。 この流れが見えていると、理科的な思考の骨格が伝わる。
なお、模擬授業では実際の実験は行わない場合がほとんどだ。 口頭説明と板書・資料提示でどこまで「予想→検証→まとめ」の構造を見せられるかが問われる。
発問例
失敗あるある 予想の時間を省略して、いきなり実験・観察に入るパターンが多い。 予想がないと、結果を見ても「へえ、そうなんだ」で終わってしまい、気づきに変換されない。 もう一つ注意したいのが、実験の安全指示を抜かすことだ。 「このとき熱くなるので、やけどに気をつけてね」という一言が入るかどうかも、現場感覚として評価に入る。
発問を作ったあとに、自分がその問いに答えてみることを勧める。 答えが薄ければ、問いそのものを見直す余地がある。
社会の授業で採点者が最初に見るのは、「導入に何を持ってきたか」だ。 写真・グラフ・年表・地図など、何らかの資料から始める導入が鉄板だ。 「事実を提示する→疑問を引き出す→調べる方向を決める」という流れで授業が始まると、社会的な見方・考え方が機能している授業に見える。
指導案のポイント 資料を見せたら、「この資料から何が読み取れる?」「どんな疑問が出てくる?」と問いを開く。 そこから「なぜこうなったのか」「誰の視点から見るか」という多角的な問いに展開する。 歴史なら複数の立場から、地理なら複数の地域から比較する発問を設計することで、社会科の「多角的に考える」という本質が見えてくる。
発問例
失敗あるある 一方的な歴史叙述になって、「正解として教える」型の授業になるパターンが多い。 社会科の問いには、一つの正解では収まらない問いも多い。 「複数の立場から見て、どの選択が正しかったと言えそう?」と問い返すことで、対話が生まれ、授業として動き始める。
社会の発問は、「知っている/知らない」で決まる問いではなく、「考えれば答えが出る」問いが理想だ。 指導案を書き終えたら、発問ごとに「これは考える問いか、答えを知っているかどうかの問いか」を確かめてほしい。
教科ごとに発問のフレームを身につけることで、採点者が見る5観点のうち「発問の質」「教材研究の深さ」「実践可能性」の3つを同時に底上げできる。 「どんな問いを立てるか」が、教科別の授業の核心だ。
自分が受験する教科で、指導要領の単元を1つ選んで「導入→展開→まとめ」を口に出して練習することを強く勧める。 発問が練れてくると、指導案全体の精度も変わってくる。
【無料】論作AIで授業観・子ども観を言語化 教科別の発問を磨くには「自分はこの教科で何を子どもに残したいか」という授業観が要る。 論作AIに自分の授業観を書いた論作文を貼ると、5観点(教育観・具体性・論理構成・実践可能性・文章表現)で採点+書き換え例が返ってくる。 模擬授業の指導案づくりと並行して使うと、発問にも論作文にも軸が通る。 👉 論作AIで添削を試す

模擬授業の口頭試問で必ずと言っていいほど問われるのが、「この授業は学習指導要領のどの部分とつながっていますか?」という質問だ。 ここで指導要領の文言が一切出てこないと、「教材研究は深くてもベースとなる根拠を持っていない」という印象を与えてしまう。
逆に言えば、指導要領の改訂ポイントを意識して授業を構成すれば、「なぜこの授業を選んだか」「なぜこの発問を立てたか」を全部、根拠付きで語れるようになる。
現行の学習指導要領(小学校2020年度、中学校2021年度、高校2022年度から全面実施)で、模擬授業の根拠として持ち出せる改訂の柱は3つある。
柱① 資質・能力の3つの柱 「知識及び技能」「思考力・判断力・表現力等」「学びに向かう力、人間性等」の3観点で授業を設計する。 模擬授業の指導案を書くときに、本時の目標がこの3観点のどれを中心に据えているのかを意識しておくと、口頭試問で迷わず答えられる。
柱② 主体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラーニング) 授業の中で「子どもが自ら問いを持つ場面」「他者と対話する場面」「教科の本質に迫る場面」が組み込まれているかが問われる。 模擬授業の展開を考えるときに、この3場面のうち最低1つは見せる設計にしておく。
柱③ カリキュラム・マネジメント / 教科横断 1単位時間の授業を、単元全体や他教科とのつながりの中に位置づける視点だ。 「この授業は単元のどこに位置づくか」「他教科ではどこと関連するか」を指導案の冒頭に1行入れておくと、それだけで構造が深く見える。
たとえば小学校5年算数「割合」の単元で15分の模擬授業をする場合、指導要領との接続を意識すると以下のように組み立てられる。
このように、各場面が指導要領のどの柱に対応しているかを自分の中で言語化しておくと、口頭試問で「なぜこの発問にしたのか」と聞かれたときに「指導要領の『深い学び』を意識し、日常場面と数学的な見方をつなぐ問いとして設定しました」と即答できる。
学習指導要領そのものに加えて、各自治体の教育振興基本計画や「育成を目指す資質・能力」に目を通しておくと、模擬授業の根拠付けがさらに強くなる。 自治体が掲げる重点(例: 探究、ふるさと教育、ICT活用、英語教育)と模擬授業の方向性を一致させると、口頭試問で「本県の教育の方向性と合致した授業観です」と答えられる。
指導要領は分厚いが、模擬授業対策としては「総則」と自分が選んだ教科の「目標」の章だけは必ず読み込んでおきたい。 ここを押さえているかどうかで、口頭試問の答えに地に足のついた根拠が出るかどうかが決まる。
模擬授業の後、口頭試問で必ず問われることがある。
「この授業でどんな子どもを育てたいと思いましたか?」 「あなたの学級経営で大切にしていることは何ですか?」 「子どもが意欲的に学ぶために、日頃からどんな工夫をしますか?」
この種の問いに、咄嗟に「自分の言葉で」答えるのは思った以上に難しい。
頭の中に「子ども観」や「学級経営観」がボンヤリとはあっても、それが文章として整理されていないと、口頭でも言葉が出てこない。 だから、小論文の練習が模擬授業の口頭試問にも直接効く。
論作AIでは、教員採用試験の小論文をAIが採点・添削している。 自分の文章を書いて、フィードバックをもらいながら「自分はどんな教育観を持っているのか」を掘り起こす作業が、模擬授業後の質疑応答の準備にそのままなる。
「子ども観」の一貫性は、小論文でも模擬授業でも面接でも問われる。 どの試験科目も、根っこにある「あなたはどんな教師になりたいか」という問いに答えるための手段だからだ。
小論文を通じて自分の考えを文章に落とし込む練習を重ねると、面接・模擬授業のどちらでも「自分の言葉」が出てくるようになる。
模擬授業の準備と小論文の練習を並行して進めることを、個人的にも勧めたい。
得意な教科を選ぶのが基本だ。 苦手な教科で知識が不確かなまま授業をしようとすると、発問が曖昧になり、子どもの反応に対応できなくなる。 自治体によっては教科が指定される場合もあるので、まず受験案内を確認する。
される。 採用側も「まだ学生・受験生だから完璧な授業は求めていない」という前提で見ている。 「教材を理解しているか」「子どもに伝えようとしているか」「双方向のやりとりを作ろうとしているか」という姿勢の部分が、経験よりも大きく評価に影響する。
字の美しさよりも、「構造が見えるかどうか」が問われている。 めあてとまとめを対応させる、子どもの発言を板書に反映させるという2点ができていれば、字の上手さはそこまで重視されない。 ただし、読めないほど小さかったり乱雑だったりすると印象は下がるので、練習で自分の板書サイズを確認しておく。
「全員が反応してくれない」という状況を想定した授業設計をしておく。 ペアで相談させる、書かせる、挙手させるなど、「反応をもらう場面を複数仕込む」ことで、面接官が反応しなかったときのリカバリーが効きやすい。 無反応は「あなたが悪い」のではなく、試験の仕様として想定しておく。
試験によって提出が求められる形式が異なる。 提出書式が指定されている場合はそれに従う。 指定がない場合は、A4用紙1〜2枚で「本時の目標・展開(3段)・評価」が読み取れる程度が目安だ。 細かすぎる指導案は本番で読む余裕がなくなるので、「自分がパッと見てポイントを確認できる」程度の密度にとどめる。
「まとめ」が終わった状態で時間が余った場合、「発展的な問い」を用意しておくといい。 「もし○○だったら、どうなると思う?」というような、答えが一つでない問いを1つ準備しておく。 時間が余ってしまった場合でも、沈黙が続くよりは話し合いの時間を自然に延長する方がずっといい。
一問うまく答えられなかっただけで評価が大きく下がることは稀だ。 「少し考えてもいいですか」と言って、整理してから答えるのが最善だ。 「わかりません」より「こんな考え方でどうでしょうか」という姿勢を見せる方が、誠実さと思考力の両方を示せる。
この記事では、模擬授業の評価5観点(教材研究の深さ・導入の工夫・発問の質・板書の構成・児童・生徒への対応力)から当日の流れ、準備フェーズ、よくある失敗と対策——そして「採点者視点の挽回事例」「校種別の攻略ポイント」「教科別の指導案と発問例」まで、一気に整理してきた。 読んでいる途中で「自分の準備に足りていた部分と足りない部分」が見えてきた人は、そのまま準備を進めてほしい。
模擬授業は、受験生が「こんな先生になりたい」という姿を一番直接的に見せられる場でもある。
小論文は文章で、面接は言葉で、そして模擬授業は「動き」で——それぞれ同じ問いに答えている。 「あなたは教室でどう立ちますか?」という問いに、自分なりに答えられる状態にしておくことが、2次試験全体の準備の本質だ。
現場で働いていた頃の最初の授業は、正直うまくいかなかった。 発問がトンチンカンで、板書は散らかって、子どもの反応に固まった。 でも、子どもの顔を見て、「どう伝えたら分かってもらえるか」を考え続けることが、少しずつ授業を変えていった。
試験の模擬授業も、同じことだと思う。 完璧な授業をする必要はない。 「目の前の子どもに伝えようとしているか」という姿勢が、評価の根底にある。
2次試験全体の対策については教員採用試験 2次試験対策 完全ガイドにまとめている。 場面指導の対策は教員採用試験 場面指導 完全攻略も参照してほしい。
模擬授業を含む面接対策を体系的に進めたい場合、以下の2冊が参考になる。
模擬授業後の口頭試問や場面指導にも対応できるよう、幅広いテーマを押さえておきたい人に。 1冊やり切ると、本番でどんな問いが来ても骨格が崩れなくなる。
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